CULTURE
命懸けで世界へ発信した記録『マリウポリの20日間』
『マリウポリの20日間』
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日ごろ、時事ニュースをどうやって入手しているでしょうか。ネットから、という人が圧倒的に多いと思いますが、流れてくるそのニュースは誰がどうやって取材したのか、どのような経路で私たちに届けられているのか、そこまで考えてニュースを読むことはあまりないのではないかと思います。
そんななかで、今回、何としても「伝えたい」という思いでピックアップしたのは『マリウポリの20日間』。現在も続いているロシアのウクライナ侵攻で、何が起きていたのか──を記録したドキュメンタリーです。
この映画に記録されているのは、2022年2月、ロシアがウクライナ東部に位置するマリウポリへの侵攻を開始してから壊滅させるまでの20日間の記録です。
ロシア軍の容赦ない攻撃で、街は電気も水も通信も絶たれ、民間人を巻き込み、瞬く間にマリウポリは包囲されていきます。当時も今もウクライナ情勢は日本でもある程度報道されていますが、このドキュメンタリーで目にする光景は「本当にこんなことが……」と呆然となり、「どうして……」の連続です。
AP通信のウクライナ人記者であるミスティスラフ・チェルノフ(監督・脚本・製作・撮影)は、仲間とともに、ロシアによる残虐行為を命がけで記録し、世界に発信し続けました。それをドキュメンタリーとしてまとめたのが本作です。今年の3月に発表された第96回アカデミー賞では、長編ドキュメンタリー賞を受賞、ウクライナ映画史上初のアカデミー賞受賞作となりました。
授賞式でチェルノフは、「この映画が作られなければよかった」とし、「すべての人質、兵士、民間人が解放されることを願っている。歴史を変えることはできない。過去も変えることはできない。しかし、我々が共に立ち上がれば、歴史の記録を正し、真実を明らかにし、マリウポリの人々や命を捧げた人々が決して忘れ去られないようにすることができる。映画は記憶を形成し、記憶は歴史を形成するのですから」と語っています。
ネットには世界中の情報が行き交っていますが、発信源が明確でない場合、その情報は本当に信じていいのかどうなのかを判断する力も必要です。そういう時代です。そのなかで長編ドキュメンタリーが担うのは、カメラを回している人たちの目の前で起きていることを、スクリーンの前にいる人たちも目撃するという事実の共有。世の中を知る入口のひとつがドキュメンタリーでもあるのです。
『マリウポリの20日間』で共有する事実は、信じがたいことばかりですが、知ったうえで考える、考えて世界を見る、そして各々感じたことを忘れない。それが大事なのではないかと思うのです。
信じがたい惨状度 |
★★★★★
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その事実の衝撃度 |
★★★★★
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命懸けの取材度 |
★★★★★
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監督・脚本・製作・撮影
ミスティスラフ・チェルノフ
配給
シンカ
4月26日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国緊急公開
(C)2023 The Associated Press and WGBH Educational Foundation
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