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野村周平と約束の時

「仕事終わったよー」とメールすると0.1秒後に「おれも終わった」という返事。
同じ仕事だから割と時間が合うんだよね。そして、適当なところで待ち合わせ。
なんでも相談できて何も話さなくても、なんだか落ち着く。これって親友……ってやつだよね?
今回出演してくれた2人は、映画『WALKING MAN』にて共演。
その映画にまつわること、今のカルチャーについて思うことなど 、WEB限定のインタビューを公開。

ー『WALIKING MAN』は、ヒップホップを中心に、貧困や格差といった社会的なテーマを扱う映画です。撮影中の雰囲気はいかがでしたか?

野村(以下S):基本、ワイワイガヤガヤやっていましたよ。ラストの橋のシーンは、本気で感情移入しましたね。美青ちゃん、リアルな芝居をしていて、すごく良いシーンになってると思う。なにか印象に残ったシーン、ある?
優希(以下M):私が好きなのは、やっぱりラップのシーン。私と周平君は兄妹の役だったんですけど、今までこんな風に思ってくれていたんだ……って初めて知ったし、ステージに立つ姿を見た時に、自然と感情移入しちゃって。「プレゼントより抱きしめてほしい」っていう歌詞がすごく心に残っています。

―野村さんに対して、本当の兄のような気持ちが芽生えてきましたか?

M:そうですね。本当に頼りがいがあります。以前共演させていただいた時も「何かあったら言えよ」みたいな感じで話して下さって。
S:そんなこと言ったっけ?
M:言いましたよ。「変な人に捕まるなよ」って。
S:それは昨日も言ったね(笑)。20歳になったら飲みに行けちゃうから、変な人に誘われてもついてくんじゃないよって(笑)。

―野村さんは、兄貴みたいな立場になることが多いんですか?

S:兄貴分みたいな感覚はないかな。平等に見ますね。年下にも年上にもこのテンションだから、兄貴肌じゃないし、座長をやっていてもみんなを引っ張っていくぜみたいなのはあんまり好きじゃないんです。普通ですよ。「何か困ったら言ってね」みたいなテンション。威張る感じじゃなくて。
M:ちょっと威張ってましたよ(笑)。
S:そうだっけ!?(笑)

―年齢の区別なく、フラットに接するという姿勢は伝わります。

S:そうですね。自分が付いて行きたければそうするし、嫌ならとことん嫌だし。年齢にはこだわらないです。みんな平等であるべきですよね。

―今作は、家族をひとつのテーマとして扱っていますが、お2人の実体験は役に反映されていますか?

S:それは全然ですね。僕はもともと弟なので、兄になるということが新鮮でした。親父が死んじゃっていて、お母さんは事故に巻き込まれちゃって、兄ちゃんとして妹を支える。全部が新しい体験でしたね。

―優希さんは、劇中で兄(野村周平)に対して反抗していますよね。どのように演じましたか?

M:私は弟が1個下なんですけど、反抗期の時は「気持ち悪い」とか「さわんな」とか言われました。

―え、そんなこと言われるんですか!

M:だから、自分の弟をお手本にして、劇中で周平君にひどいことを言ってました。お兄ちゃん側の気持ちもわかるなあ……と思いながら。

―今作では、カルチャーに対して「憧れる」という感情が描かれています。野村さんは何かに憧れる感覚はありますか?

S:今ニューヨークに留学していて、それが実現できていることがうれしい。自分が行きたかった所に行けているし、今はまさに憧れに出会っている最中ですかね。

―ずっとアメリカに行きたいと思っていたんですね。

S:スケボーが好きだし、それを通じてどこかに行けたらなってずっと思ってて。それが今かなって。5歳の時からスケボーやってるんで、身近にカルチャーがありすぎたんです。だから、大人になってカルチャーと出会うみたいなのはあんまりなかったんですよ。今、ニューヨークで、僕にとってのカルチャーショックに出会っている感覚です。

―印象的な出来事はありましたか?

S:向こうにいるプロスケーターとかと気軽に飲めたり、一緒にスケボーできたりするのって、本当にすごいことですよね。映像でしか見たことない場所に行って、「ここってこんなデカイの!」とか、「こんなのおかしいでしょ!」みたいな気持ちになる。実物を見ないと分からないことだらけですよ。

―ニューヨークってことは、Supremeまわりのクルーとも関わってるんですか?

S:そうですね。ほとんどサップ(Supreme)の人達ですね。ショーン・パブロとか、ベン・キャドゥとか、後はストアで働いてる子とか。みんなすぐ仲良くなれて。学校帰りに立ち寄れるのが東京の感覚と近くて、ニューヨークでそれが出来てるのはうれしいなって。

―スケートボードがコミュニケーションになっているんですね。

S:あとは、飲みニケーションですね。

―そうなんですか(笑)。

S:どれだけ飲めるかって、万国共通の言語ですよ。「お前すごい飲むね」ってだけでコミュニケーションとれちゃう。あと、シンプルに面白いか面白くないか、騒げるか騒げないかみたいなところ。飲んでどうなるのかとか、そういうところを見てますね、彼らは。

―仲間の一員になる感覚をどうつかんでいくかって、重要ですよね。

S:そうそう。なかに入って行けるか行けないかは、けっこうシビアですよね。入っていっても、まだ何もわかんないんですけど。

―英語のほうはどうでしょうか?

S:とにかく速いんですよ、向こうの英語は。学校で学んでる英語とは全然違って、現実は速すぎる。ようやく聞き取れ始めたかなみたいな。って思ったら映画の宣伝で帰ってきて、全部忘れちゃいそう……。耳がこっちの耳になっちゃって。向こう行ったら向こうの耳に戻るんでしょうけど……。

―あんまり日本語喋ると良くないかもしれないですね(笑)。

S:あんまり喋らず一言だけにします、このあとのインタビュー(笑)。
一同:(笑)。

―ヒップホップもそうですが、優希さんはいわゆる男の子のカルチャーって、どう感じますか?

M:私、スケボーできる人好きなんですよ。
S:コナン君好きだもんね。

―コナン君?

M:そうです。周平君のインスタストーリーズを見ていて、「すごい! コナン君みたい!」と思って、「コナン君みたい!」って送りました。
S:いきなり美青ちゃんからメッセージが来て、何かあったのかなって思ったら「コナン君みたい!」ってだけ。なにそれ! 全然ちゃうわ! コナン君もっとすんごいわ!みたいな(笑)。

―コナン君、ギュンギュンですからね。

S:ギュンギュンですよ、彼らは。

―コナン君ありきでスケボーを見る人って、なかなかいないですよね。

S:なかなか珍しいタイプですよね。でも、日本だったらコナン君を見て初めてスケボーを知る人もいるのかもね。スケボーあんな速いもんじゃないから。踏んだらビューンっていくんじゃなくて、自分でこぐから(笑)。

―優希さんは、ヒップホップはもともと聴いていましたか?

M:いいえ、ぜんぜん知らなくて。この映画でラップを知ってANARCHYさんの曲を聴くようになりました。
S:何が好き?
M:下駄箱に置き去りのハイヒール……のやつ。
S:あ、「Fate」ね。
M:それです。

―野村さんはずっとヒップホップがお好きですか?

S:小学校高学年ぐらいから聴いてるような気がしますね。横乗り系をやってると自然とついてきちゃうんですよ。ずっとヒップホップで、1回R&Bがあって、ソウル、レゲエ、またヒップホップ。今トラップミュージックみたいな。だからずっとこっち界隈ですね。最近はハウスとかテクノとかも聴くし、なんかわけわかんないやつも聴きますし、AORとかYMOみたいなやつとか。結構幅広いかもしれません。

―これまで自分でラップをやったことってありました?

S:カラオケか、自分の行きつけのバーで歌う、みたいな感じのことしかやってなかったんで、ちゃんとステージに立つのは初体験でした。

ー喋ることが得意でないラッパーという役柄、難しかったのでは?

なって思ってます。ちょっと離れようって。

ー苦戦したということですか?

S:今作の場合は、「野村周平」になっちゃダメじゃないですか。慣れ親しんでいる音楽だからこそ、自分が出てきちゃうんですよ。すごく難しかったですね、感情入れてやるのは。

ー口下手で、塞ぎ込みがちな役柄、印象的でした。

S:そうですね。実際にそれで困ってる人がいますからね。友人に映画を観てもらったんですけど、ずっと真似してきて、「すすすす」みたいなことやってくるから、「バカにすんじゃねえ、本当にそれで困ってる人いるんだぞ」って怒ったんですよ。

ーある種、ラップバトルって、お互いの特徴を切り取って侮辱し合うわけじゃないですか。作中でも、差別的な言葉をぶつけ合うシーンがあって、その生々しさが、炎上を恐れていない、本来の反骨精神があっていいなと思いました。

S:あのラップ自体が映画のメッセージですよね。フラットな関係性ではないし、差別用語とかも入ってくる。その場に限定された言葉だけで終わればいいんですけど、そこに感化されちゃダメ。たまにいるんですよ、ひきずっちゃう人が。そこはきちんと分けないといけない。

ーこの映画自体が強い問題提起をしている作品だと思いますが、今お2人が世の中に対して言いたいこととかあったりしますか?

S:こういうの言うと、また切り取って書くでしょ〜? 話した通りの言葉で書いてくれるんですか?

ーちゃんと書きますよ。

S:僕、最近、発言を切り取られることが多いんですよ。それを悪意を含んだような書き方で出されてしまう。

ー見出しで煽るというのは、メディア側のエゴでしかなくて、卑劣だと思いますね。

S:クリックすれば事実は書いてあるかもしれないけど、開かない人も多いし、見出しだけで「あいつ馬鹿じゃん」ってなる。

ーもう少し聞きたいです。

S:ニューヨークでも、たまにネットニュースとか見るんですよ。今年は「イケメンが歌う作品」が多かったみたいなんです。菅田将暉、田中圭君とか、歌ってたみたいなんです。ただ、そこに僕は入ってなくて、「俺も歌っとるぞ!」みたいな。日本だと、ラップは歌だと認められていないのか? って。百歩譲って、イケメン枠じゃないとしたら……嫌ですけど……(笑)。
一同:(笑)。
S:本当のことを言えばね、イケメンかどうかなんて、どっちでも良いんです。ちゃんと歌っているし、音楽に、映画に本気で向き合っているのになって思うんですよ。

―切り取られ方がいびつなんですよね。

S:みんな好感度だけを狙いすぎてるんじゃん? って思いますよ。

ー優希さんはいかがですか?

M:普段は考えないんですけど、この映画を観て、お金がないから関わらないとか、人として扱ってもらえないとか、保険の星田さんとのシーンとか、すごく心が痛くなりました。

ー今回登場していただくNYLONは、ユースに向けた1冊です。自分達より若い世代に伝えたいことはありますか?

S:かっこよくあれよって、思います。別にどんな種類の人間がいても良いんですけどね。なんだろう、言えるようで言えないな。

ーかっこいいっていうのは見た目じゃなくて、スタンス?

S:伝えたいのは、「好きに生きなよ」ってことです。本当にそう思う。人生一度だし、大人や長いものに巻かれなくても良い。自分が好きな人とつるんで、その人達と良いセッションができていれば、良い物がつくれる。自分を売るようなことはしなくて良いんじゃない? って。セルアウトしちゃダメだと思う。僕はもう、やりたくないことはやりたくないって言っちゃうので、自分を持って人生を楽しく生きることを選びます。「人生は1回だ」っていうのをニューヨークに留学して強く感じました。

ーどんな時に感じたんですか?

S:いまは仕事ができないから、時間が自分のものになっているというか。1年後には日本に帰ってきて仕事しなきゃいけないと考えると、この1年がめちゃめちゃ貴重になる。でも、本当はどんな1年だって大切ですよね。時間って限りのあるもの。年を取ってくるとできなくなることが多くなるから、若いうちにやれることをやって、好き勝手生きたほうがいいと思うんすよ。だって死ぬんですよ、絶対。絶対っていうのは、死ぬことだけじゃないですか。

ー本当にそうですね。

S:いつ死ぬかだって、わからんし。好きなことをやったほうが良い。まあ、僕は今ニューヨークで自由な生活をしてるんですけど(笑)。

ー優希さんは今、自分のやりたいことをやれてる感覚ですか?

M:これでいいのかな? って悩む時はあります。
S:良いじゃん。俺なんていつでもやめたいと思ってるよ、俳優。

ー2人とも、悩んでいるんですね。

S:俳優は楽しいです。でも、しがらみも多いですよ。批判されるのをビビったり、コンプライアンスがどうとか。そういうのを気にし始めたら俳優なんかやってられないよな、って。

ーそういうネガティヴな声が誇張されがちな時代ですよね。

S:悪口を言いたいなら、直接言うほうがいいですよ。

ー最後に、NYLON15周年のテーマに関する質問です。

S:そんなに長いんだ。おれこないだ表紙やらせてもらいましたね。

ーすごくいい表紙でした。ありがとうございます。

S:あれ、かっこよかったでしょ? ああいうのですよ、かっこいいというのは……(笑)。あれをやらせてもらえて、NYLONはすごいなと思いました。

ーNYLONにそういうイメージを持っていただけているんですね。

S:勝手に女性が読むものだと思ってたから、表紙のお誘いが来たときに本当に俺で大丈夫なの? って思ったんです。「これまでのイメージをぶっ壊していいならやらせてください」って言ったらOKが出たんで、あ、心広いなって(笑)。

ー(笑)。

S:だから僕もインスタに、「NYLON読者の方々にはわかりにくい内容になってますが、是非ご覧ください」みたいなこと書きましたね。あ、それで、なんでしたっけ?

ー今のお話が象徴していますが、15周年のテーマが「NEW POWER NO BORDER 」っていうテーマなんです。

M:あの、英語の意味がわからないんですが……。
S:まじで! 新しいな! NEWぐらいはわかるでしょ!(笑)。

ーリアルなユースには伝わりにくいんですね……(笑)。壁を越えて新しい力を生んでいこう、っていう意味です。

S:NEW POWERはめっちゃいますよ、東京に。若い子たちはすごいと思う。若い芽はいっぱいいるけど、そういう若い芽を潰す大人達もいる。だからそれに負けたくない。上のほうで居座ってる人達がギャーン! っていなくなれば、ドーン! ってきて、日本ワー! ってなるんすよ。そういうことです。次は美青ちゃんがNYLONの表紙ですね。

ーありがとうございました。

look01

SHUHEI: jacket¥133,000 shirt¥79,000 pants¥79,000 all by alexanderwang sneakers¥5,500 by vans/billy's ent shibuya

MIO: dress¥73,000  earrings¥18,000  shoes¥74,000 all by toga pulla belt¥8,000 by g.v.g.v./k3&co.

look02

SHUHEI: hoodie¥13,000 by carhartt wip t-shirt¥9,000 by ftc pants¥5,000 by dickies/prov others stylist's own

MIO: knit¥48,000  pants¥75,000 knit¥82,000 all by akane utsunomiya/brand news earrings¥14,000  ring¥5,500 by monday edition /gem projector

INFORMATION
野村周平と優希美青が出演する、ラッパーANARCHYの初監督映画『WALKING MAN』が現在全国公開中。極貧生活を送る口下手でコミュ障な主人公が選んだ道は、なんとラップ。観た後はあなたも夢を持ちたくなるはず。

SHUHEI NOMURA/野村周平

@QS86_SHUHEI

1993年11月14日生まれ。兵庫県出身。AB型。2010年に俳優デビュー。『ちはやふる』『帝一の國』など多くの話題映画に出演。資生堂unoのTVCMでかっこよさを見せつけてくれたのは記憶に新しい。スケボーやBMXなどストリートに生きる一面も。現在NYに留学中。

MIO YUKI/優希美青

@MIO_YUKI

1999年4 月5日。福島県出身。O型。第37回ホリプロタレントスカウトキャラバン2012年グランプリを受賞し芸能界デビュー。映画『暗殺教室』『ちはやふる』、ドラマでは『あまちゃん』『デスノート』などへの出演を果たす。清純派女優の未来に期待が高まる。

ハッシュタグ #CLOSETOSHUHEIをつけて、
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※応募期間 2019年11月8日~11月27日

STAFF
MODEL: SHUHEI NOMURA(amuse), MIO YUKI(horipro)
PHOTOGRAPHY: TAKAHIRO IDENOSHITA
STYLING: KENICHI HIRAMOTO FOR SHUHEI DAISUKE MORIMUNE FOR MIO
HAIR&MAKEUP: SURUGADAI YAGUCHI(SURUGADAI YAGUCHI) FOR SHUHEI
KAZUHISA KURUMISAWA FOR MIO
INTERVIEW: TAIYO NAGASHIMA
EDIT: SHOKO YAMAMOTO
DESIGN: MIZUKI AMANO
CODING: JUN OKUZAWA