完璧だと思った時点で
成長は止まってしまう
-オンオフはどう切り替えているんですか?
オフは基本的にはダラダラと過ごして完全にオフ状態です(笑)。ですが、最近は家族や友人と積極的に旅行に行くようにしています。
-その旅行は単にリフレッシュのためだけですか? それとも情報収集も兼ねて?
子供を連れて出かける旅行は完全にオフモードですが、半年に1回パリコレクションを見にパリへ行く時は、子供と離れてリフレッシュも兼ねた仕事のような旅行です。
-仕事モードで行くパリで得られるものは何ですか?
やはりいちばんは、そこに集まる人達の空気感を感じることです。インターネットが普及していますから、WEBを開けばコレクションのルックやファッションウィーク中のスナップも全て見れるので、わざわざ現地に行く必要もないと感じる方もいると思いますが、でも、実際にその場にいないと感じることのできない今のムードが伝わってくるんです。これを通して何がプラスになるかと言われたら具体的に何とは答えられませんが、この経験が自後々仕事とし返ってくると思っています。
-コレクションを見るにはご自身でアポイントを取っているんですか?
事前にブランドへアポイントを取るんですが、前日や当日になるまで行けるかわからないブランドも多いです。パリコレクションは今でもアナログで、手紙でインビテーションを受け取らなければならなくて、そのインビテーションをいくつも持ち歩きながらメトロを乗り継いで会場まで行かなければならないので、本当に疲れます(笑)。日本だとアシスタントもいるし、車も使えるので、改めて楽しているなって。パリに行くと初心に帰れます。
-これまでに影響を受けたモノやコト、人物はいますか?
音楽とドラマには結構影響を受けていましたね。女性アーティストでしたり、それこそ『SEX AND THE CITY』には夢中になりました。出演者のスタイリングもそうですが、登場人物達の“強い女性像”が好きだったんです。すごくファッショナブルだけど、仕事もバリバリ働くキャリアウーマンで、そういう自由で強い女性達に憧れて、私もそういう生き方ができる女性になりたいなと思うようになりました。
最初のパリコレに行った時に、アクネの展示会場にいた可愛いモデルを撮影したもの。
-スタイリストとしての得意分野と苦手分野は?
次のファッションのムードや流れを汲み取るのは得意だと思っています。ですが、これが常に今の日本にハマるかどうかまではわからないので、逆をいうと今みんなが欲しいものとか聞かれるのは苦手かもしれません(笑)。日本のファッション誌だとそういう企画が多いのでそこが難しいですね。でも日本をベースにして働いているので、もちろん、日本人ならこういうのが似合うし今のムードを日本に当てはめるならこれがいいよね、と考えながらスタイリングするのももちろん楽しいです。
-NYLON JAPAN(以下NYLON)でのスタイリングはどう取り組んでいますか?
NYLONはいつも本当に楽しいです。日本の雑誌のなかでもいちばんフレッシュなスタイリングを考えることができるので、世界のなかでも最先端のスタイリング、世界観を作ろうという気持ちで臨んでいます。他の雑誌だと、日本でのファッションのニーズを考えて「日本人が好きなファッションってなんだろう、誰もが欲しいと思えるアイテムはなんだろう」と悩むことが多いんです。対して、NYLONはどんなに尖っていても、最先端のファッションを提案してもそれが良ければ受け入れてもらえるので、本当に楽しいです。
-今後スタイリストとして成し遂げたいことや、スタイリスト以外の分野でスタートさせたいことはありますか?
今ある興味としては、ブランドやショップを始めることですかね。ビジネスとして成立するかどうかは置いておいて、ブランドでもヴィンテージショップでも、自分の好きなものを1から形にしてみたいです。インテリアや空間演出も好きなので、それらを複合させた気持ちの良いお店を作ってみたいですね。あとは、日本以外でも仕事の幅を増やしたいと思っています。
-それらは、目標としての最終地点と考えていますか?
今までもとにかくいろいろとやっているうちに仕事に繋がっていったことが多いので、何が最終地点なのかは全くわかんないんですよ。でも、スタイリストと関係ないかもしれませんが、1度海外生活を経験したいですね。もしパリに移住するならどこかのブランドに入ってアシスタントを経験したり、NYに移住するならコマーシャル系のスタイリストや、編集部のアシスタントについたり、今まで経験したことないことをしてみるのも良いかなと思っています。優等生ではないけど興味があることなら1から勉強するのも苦じゃないんです。
-では最後に、スタイリストを目指している人や進路に悩んでいる人に向けてメッセージをお願いします!
とにかく好きなことに対して全力で真面目に取り組んでいれば、いつか仕事に繋がると思います。あとは、自分の力を過信しすぎないこと。疑ってかかれというか、自分は完璧だと思わないようにしています。完璧だと思った時点で成長が止まってしまうんです。常に自分には足りないものがたくさんあると思っているので、まだまだ勉強もしますし、不安だと感じることも多いです。その分その気持ちが次の仕事に繋がってくるので、常に自分の力を完璧だと思わず、本当にこれで問題ないのか疑う気持ちを持つことが大切です。
Yoko Irie/入江陽子 1985年、広島県生まれ。アシスタントを経て2013年独立。2016年からTRON management所属。国内外のエディトリアル、ブランドのLOOKBOOK、アーティストのスタイリングなど幅広く活動。女性らしさのなかにエッジを効かせたバランスのとれたスタイリングが得意。 Instagram :@yoppy0105 |
ILLUSTRATION: ERI AIKAWA
INTERVIEW: KAHO FUKUDA
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CODING: NATSUKI DOZAKI