中途半端になるならやらないほうがいい
やるからには100%かそれ以上
-えみりさんの最初の事業はアパレル業とのことですが、始めたきっかけは?
アゲハに出させていただいていた頃、そこで初めて夜以外の方々に出会ってすごく楽しかったんです。でも、当時まだそこまで人気もなくて、自分が何か商品を売っても売れないだろうと思っていて。キャバクラ嬢としては売れていたけど、芸能人のように誰もが知っている有名人でもないし、特別可愛いわけでもない。そこがアパレル業を始めるにあたってのコンプレックスでした。でも周りから「キャバクラ嬢だから、ドレスは毎日着るからドレスだったらできるんじゃない?」と後押しされて「確かに!」って思ったんです。それで、自分も可愛いドレスを着ていたからこそ仕事を頑張れたということもあったので、実際に自分が着たいドレスを売っていこうと。周りの女の子も自分と同じ気持ちでドレスを着ていたという思いを知っていたので、受け入れてもらえたんだと思います。そういう共感性が売れる商品を作り出してくれて、ストーリー性のあるものだったら自分にもできるかもしれないと思ったんです。なので、今自分がやっている事業は自分に関係性のある仕事しかしていないですね。
-現在ご自身のブランド『EmiriaWiz(エミリアウィズ)』はドレスだけではなく、リアルクローズも展開させていますよね?
詳しくいうとドレスは最初別のところでやっていて、ドレスの販売面では上手くいっていたんですが、一緒にやっている人と上手くいかなくなってしまって……。そこで一緒に仕事をしていく人を考えるのも大切だなと思って、エミリアウィズを始めたんです。
-立ち上げ当時はあまりキャバクラ嬢をターゲットとしたブランドはなかったのでは?
そうですね。あったとしても、やっぱり5〜6年前はまだあまりいいイメージではなかったので、キャバクラ嬢向けと言いたくなかったんだと思います。実際にメインユーザーはキャバクラ嬢だけど、ブランドのイメージが悪くなるのでモデルにキャバクラ嬢を使わないでください、みたいな。その点エミリアウィズは自分がキャバクラ嬢だったからこそ、普通にキャバクラ嬢向けと打ち出せたっていうのが他のアパレルブランドと差をつけられたところなんじゃないかなと思います。
-スタート当初、アパレルに対しての知識はどこから得ていたんですか?
始めた頃はわからないことだらけでしたよ。洋服ってどうやって作るの? みたいな(笑)。検品や配送、ましてや配送の段ボールをどこで調達したいいのかもわからない。果たして今作ってもらっている業者が安いのか高いのかもわからなかったので、とにかくいろんな人に聞いたり、ネットでひらすら調べていましたね。自分で調べていいと思ったら、そのメーカーや会社の人と直接お会いして、工場が中国にあると知ったら中国に行ってみるとか。
-ご自身の足で中国まで!?
そうなんです。月に2〜3回は中国に行ってましたよ。その当時、日本のメーカーさんがOEMとして間に入って洋服を作ってくれるだなんて知らなかったので、「工場といえば中国!」みたいな感じで直接交渉していました。中国の工場の方は日本語がわからないので、伝えるのも大変で。今だったら考えられないですけど(笑)。結構アパレルの人に聞いてもどこで作っているのかは教えてくれない人が多くて、検品や工場との間に入ってやりとりしてくれる人がいると知ったのは始めてから1年後くらい。
-それはどのタイミングで知ったんですか?
全く違う分野の人から「紹介するよ」と言われてひょっこり出会えたのがきっかけで、「中国まで行ってるよ」って言ったらすごく驚かれましたね(笑)。でも、この経験があったからこそ初めから誰かに任せていたらわからなかったようなところまで知ることができたので、日本のメーカーさんに頼む時に「できないです」と言われても「中国にこういうことができる工場がありますよ」と教えると「何でそんなことまで知ってるの?」とびっくりされたり(笑)。この1年は経験して良かったなと思います。中国では洋服以外にもいろんなものを作っているので、もしアパレルのOEMを探して洋服だけを作っていたら「自分でも何かできそう!」という感覚にはならなかったと思います。
-物作りに対してはどのようなこだわりがありますか?
こだわりはどんどん変わってきていますね。最初の頃は可愛ければいいみたいなパッと見の可愛さを求めていたんですが、今は着やすさや着心地、素材などをこだわるようになりました。
-なぜ変化していったのでしょう?
そこは自分の年齢ですかね(笑)。立ち上げ当初と変わらないままでいくか、私のようにプロデュースしているブランドだったら、プロデューサーと共にブランドも変化させるかすごく悩んだ時期があって。やはりエミリアウィズはキラキラ、ピンク、花柄のイメージで始めたので、この要素をそのまま残すか、でも自分が年齢を重ねるとちょっと違うよねっていう違和感があったり。毎日ミニスカートや高いヒールばかり履けないというところで、ものを売るために作るというよりは、原点に戻って自分が着たいから作るという方が合っているなと思ったところが一番のこだわりかもしれません。
-変化していくことでお客様からの反応はありましたか?
「変わっちゃったね」とか「前の方が好きだった」と言われたこともありましたが、それでも自分が着たいものを作りたいというこだわりが強かった。でもこの変化があって、今まで私のことを知らなかった新しい分野からのお客様が洋服を見て可愛いと思って買ってくれることもあったので、それはすごくうれしかったですね。
-洋服に限らず、えみりさんのクリエイティヴにはただならぬこだわりを感じます。
自分の好きなものがはっきりしているので、好きなものはプラスする、あとは絶対に中途半端にしないということは決めていて。店舗だったら、もう路面でということは決めていたので、そこで中途半端にケチると後で「やっぱりもっとこうすれば良かった」という後悔が残ると思うんです。何を作るにしてもとことんやりきることが大切。だから誰かに任せたりもしないし、まあいっかと諦めたりはしない。中途半端になるくらいならやらないほうがいいと思っています。やるからには100%かそれ以上。
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Emiri Aizawa/愛沢えみり 1988年9月1日生まれ。歌舞伎町のジェントルマンクラブに在籍していた2011年、23歳で雑誌『小悪魔ageha』からスカウトをされ、初登場ながら特集を組まれる。その翌年2012年には同誌の専属モデルとなり、モデルとして活動しながらも『日本一のキャバ嬢』としてTV、ラジオなどにも出演。2013年7月には自身初のブランドとなるEmiriaWizを立ち上げ、2016年に新宿に第1号店を出店。モデル・社長もこなす傍ら、ドレスサイト“maison de beaute”、美容クリニック“VENUS BEAUTY CLINIC”、歌舞伎町キャバクラ“FOURTY FIVE”のプロデュースも行っている。 Instagram :@emiri_aizawa |
ILLUSTRATION: FUKUDA
INTERVIEW&EDIT: KAHO FUKUDA
DESIGN: AZUSA TSUBOTA
CODING: JUN OKUZAWA