CULTURE
2020.02.06
It's Work Time vol.10 movie director Kenichi Ugana
夢を追い続ける全ての人へ発信するお仕事連載
憧れの仕事の極意に迫るインタビュー連載。
今回は、『黒い暴動❤︎』、『サラバ静寂』など
映画を世に送り出してきた監督 宇賀那健一を取材。
映画に対する熱い思いや、2月7日(金)より
全国順次公開される『転がるビー玉』の撮影秘話を伺った。
映画に携わるのが俳優から演出に変わっただけ
俳優の気持ちが分かるから演出がやりやすかった
-映画監督として活躍する前は俳優をされていたそうですね。
高校生の時に付き合っていた彼女が俳優の浅野忠信さん(以下浅野さん)の大ファンで、浅野さんが出ているDVDをひと通り借りたんです。最初は「浅野忠信がなんぼなもんじゃい」って気持ちで見ていたんですが、見ているうちに邦画にがっつりハマってしまって、自分も映画に携わりたいと思っていたんですが、映画の撮り方なんてわからないし、自分に何ができるんだろうと考えたら役者かな、と。ちょうどその頃浅野さんが出ていた作品で『地雷を踏んだらサヨウナラ』という映画が舞台化されるというのが発表されて、その出演キャストの募集をしていたので応募しました。
-どんなオーディションだったんですか?
まず、募集要項が35歳以上だったんですけど、当時はまだ17歳で、でも「出しちゃえ!」って思いきって送りました(笑)。オーディション自体初めてで審査の前に待合室で待ってるとかそういうノウハウがわからなかったので、そのままオーディション会場に行っちゃって「待合室で待ってて」なんて注意されたりもしました(笑)。オーディションって普通芝居に関することを自己PRするじゃないですか。でもそんなことも分からないので、当時趣味だったスキューバダイビングをしながら撮った水中写真を見せるっていう謎の自己PRと台本の読み合わせをしました。今考えたら無茶苦茶だったんですが、その結果、僕のために新たに役を作ってもらえたんです。
-俳優を経験するうちに監督や脚本に興味を持ったのでしょうか?
こういう映画に出たい、こういう芝居がしたいっていう思いがなかなか実らない時期が長くあったんです。そういうフラストレーションを抱えているなか、『着信アリFinal』という映画の撮影で、同年代の役者達と長期間海外で一緒に寝泊まりすることになって。話していたらみんな自分と似た思いを抱えていたんですよ。「だったらみんなで映画撮っちゃおうよ」って気軽に撮り始めたのが監督業に踏み込んだきっかけです。それで最初に撮った作品が海外の映画祭で入選したりして、どんどん映画を撮っていくうちに、気づいたら監督業がメインになっていったって感じですかね。
-演じ手から作り手に変わり、心境の変化はありましたか?
キャストとスタッフが別っていう考えがあまりなくて、あくまでも俳優も撮影部、照明部みたいに、俳優部というひとつの部署だと思っているので、心境の変化もあまりなかったですね。映画に携わるのが俳優部から演出部に変わっただけだなと。俳優部の気持ちが分かるから演出部としてやりやすかったことが多いので良かったと思います。
-飲食業もされていると伺いました。飲食業をスタートされたのはなぜですか?
映像の制作会社を作りたかったんですが、ただの映像の会社だとやりたくない仕事も受けざるを得ないと思って、それが僕は嫌で(笑)。他でなんとか回るシステムを作りたいなって思ったんですよね。それで、映像以外だったらなんだろうって考えた時、映画が撮れなかった期間に1度飲食媒体の営業マンを3年間していて、飲食店でバイトしたことすらなかったんですが、数字上は語れるようになったんですよね。それで、いろいろとノウハウがわかる場でやりたいなってことで渋谷に飲食店をオープンしたんです。お店には一応120インチのスクリーンがあるので、試写会みたいなこともできるし、全席電源があってタバコも吸えてWi-Fiもあるので打ち合わせもできて打ち上げもできて。ロケ貸しもできるから自分の得意な分野と掛け合わせることができるかなと思ったのが1つの理由ですね。
-映画にこだわるのはなぜですか?
小さい頃から映画が身近にあったんです。僕、幼稚園を登園拒否していたんですよ。幼稚園の時に空気を読まなきゃいけない感じがすごく嫌で。でも、行かなくなるとやることがないじゃないですか。母親の家事とか買い物を手伝っていると、ご褒美にレンタルビデオ屋に寄って好きなビデオを借りてくれて、母親も自分が好きな映画を借りてきて、それを一緒に観ていたんです。家族全員で出かける時も映画を観に行くことが多かったし、小さい時から映画を観る機会は多かったので、映画に対する身近さや憧れは昔から常に持っていましたね。
-映画ならではの良さはどういうところですか?
お金を払って能動的に観に来てくれるものだということと、映画館という暗闇で数時間拘束して観せられるということですかね。テレビやネットだと途中で止めたり、ながら見しちゃったりするじゃないですか。だから飽きられないように展開を早くしなきゃとか、キャッチーにしなきゃとか気を使うと思うんです。それが映画なら自分で能動的にお金を払って来てくれるわけだし、その上で一定時間逃げられないので、誰にも気を使わずに「これだ!」っていうものを見せつけられるなと。そういう贅沢さもある反面、気軽に観に行きにくいものでもあるとも思います。映画で20万人集客しようとなるとすごく大変だけど、YouTuberだと1本20万PVって結構いるじゃないですか。そういう、人への届け方の難しさをどうクリアしていくかが映画の課題だと思います。
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宇賀那健一/Kenichi Ugana
1984年生まれ、東京都出身。青山学院大学経営学部卒。ブレス・チャベス所属の映画監督/脚本家。過去作に『黒い暴動❤』、『サラバ静寂』他。2019年には『魔法少年☆ワイルドバージン』が公開となった。 |
ILLUSTRATION: MYOKAHARA
INTERVIEW&EDIT: KAHO FUKUDA
DESIGN: AZUSA TSUBOTA
CODING: JUN OKUZAWA