あなたの魅力を分かってくれる人はいるはず
悩む時期は絶対に必要だし無駄ではない
-いちばん影響を受けた映画はありますか?
役者として悶々としていた時に観た、平野勝之監督の『人間らっこ対かっぱ』ですね。マグロの頭を持った人間が、マグロの頭を釣竿みたいに川に落としたら、ダンボールのハリボテで作ったラッコとカッパなどいろいろな生き物がやってきて、セリフはほぼ「ギャー!」だけで戦いだすんですよ(笑)。本当に意味わからないんですけど、なぜか感動して。内容に感動したというより、ダンボールのハリボテでやりきって、しかも面白いと思わせる力ってすごいなって思って、自分も映画を撮るきっかけに後押ししてくれました。どんなにミニマムでもダイナミックにできるんだなって思った部分もあるし、ちょっと悪く言うと、自分でもやれるんじゃないかって思わせてくれた部分でもある(笑)。セリフや説明がなくても伝わるっていうのは感動しましたね。
-企画、宣伝、配給まで自分でされている作品もあると伺いました。全
ての作業を1人でこなすのは大変な作業ではないですか?
そうですね、全部やる大変さはもちろんあるんですけど、ちゃんと自分の目の届くところにある良さもあるかなと思います。自分の希望していない宣伝のされ方もしないし、自分のかけたいと思う映画館でかけることが出来る。ひとつの作品の企画を考えて、DVDになるまでとなるとどんなに短くても3年とかはかかってしまうので大変ですが、もう子供のようなものなんです。-売れる映画とはどのような映画だと考えていますか?
売れるって言葉も難しいですが、製作費を超えて黒字にするということであれば、今は2極化していて、億規模な映画か1000万円以下の映画化のどちらかが強いと思います。宣伝費をバーンとかけるか、小さいところから始めて口コミで何カ月も上映して広がっていくっていう。だから難しい時期にきちゃっているなと思います。本当はその間がいちばん作りやすいんですよ。政治が入りにくくて、なおかつ自分がいいと思った撮影環境やスタッフ、キャストで作れる。でもそういった映画がなかなか回収できないのは悲しいですね。
-NYLON JAPANの15周年のテーマ「NEW POWER NO BORDER」に共通することはありますか?
これからどんどんそういう時代になっていくと思います。今日本映画がすごく難しい状況にきているなか、海外で作品を作ることや配信コンテンツと共に作品を作っていくことは視野に入れるべきだと思います。1つの場所に拘り続けていてもいいことはあまりないですし、いろんなものを超えていきたいですね。
-では最後にこの企画を読んでいる読者に向けてメッセージをお願いします。
生きていたらいろいろ悩むこともあると思うんですが、悩んでも、上手くいかなくてもそんなあなたのことを見ている人はいるし、そんなあなたの魅力を分かってくれる人はいるので大丈夫です。僕も1回映画を撮るのを諦めて就職しましたけど、結局戻ってきちゃいました。でもその苦しい時期があったからこそ、今の自分があるとも思っています。悩む時期って絶対に必要だし無駄ではないと思うんですよね。
宇賀那健一/Kenichi Ugana
1984年生まれ、東京都出身。青山学院大学経営学部卒。ブレス・チャベス所属の映画監督/脚本家。過去作に『黒い暴動❤』、『サラバ静寂』他。2019年には『魔法少年☆ワイルドバージン』が公開となった。 |
ILLUSTRATION: MYOKAHARA
INTERVIEW&EDIT: KAHO FUKUDA
DESIGN: AZUSA TSUBOTA
CODING: JUN OKUZAWA