情報が多くてゴールが先に見えてしまう
自分を信じて自信を持って欲しい
−ヘアスタイリストとしての仕事について、また身につけておくべきマインドについてたくさんお聞きすることができました。森岡さんの今後挑戦したいことはなんでしょうか?
もうロンドンでは始めているんですけど、ウィッグを作り始めているんです。ネットのベースから、エクステを1 本1本植えて作っています。この技術をもうちょっと発展させて、上手に使えるようになったらモデルの髪質や、 髪色など関係なく表現の幅が広がるなと思っていて、そういう意味ではこのまま続けて挑戦していきたいなと思っています。
—もともとウィッグには興味があったんですか?
そうですね、もとから興味はありました。ロンドンでは使っていける現場が最近多くなってきているのでなおさら興味が湧いたんです。今までは既製のウィッグを買うだけだったんですが、自分で作れたら生え際とか毛量とかそういうのも全部調整できるのでよりクオリティの高いものができると思って。去年くらいに技術を教えてもらう機会があったのでそこから徐々に作り始めていま す。ウィッグも使い方ひとつでリアルにも見えるし、今までできなかったスタイルもできるのでいいなと思います。めちゃくちゃ時間かかりますけど(笑)。
—ひとつ完成させるのにどのくらいの時間がかかるんですか?
ものにもよりますが、30〜40時間くらいかかりますね。ベースをネットの状態から作って1本1本植えていくと、今の自分では40時間くらいかかってます。本当に1本1本手作業なので、それで毛量が多いものが欲しいとなったらもっと時間がかかるし。でもロンドンは時間がゆっくり使えるので、いろいろ作れたらなと思います。
−では最後に、NYLON JAPANの読者にはヘアスタイリストはもちろん、ヘアに興味を持っている人が多いと思うので、夢を追いかける若者達に向けてメッセージをお願いします。
自分もついこの前まで、「最近の若いやつは」と言われていた世代でした。ロンドンでも20代前半の子と話す機会が多くて、いろいろ話を聞いていると、今の若い子は情報を得る力と得る方法がすごくたくさんあるなかで、努力する前にゴールが先に見えてしまって、その情報のなかで答えを出しちゃいがちなのかなって心配しています。自分らは逆に情報がなかった分、目の前のことをやるしかなくて、そこを信じて進むしかなかったのである意味その先に夢が見れたんですけど、今は情報がありすぎて、いいことも悪いこともいろんな情報が手に入るじゃないですか。それで100%夢に集中しきれない部分があるのかなと思っていて、それがあると下積みの辛い時代が過ごしきれない。今の新しい世代の子達には昔みたいなスタイルではやりきれないと思うので、得た情報を全部鵜呑みにして結論つけず、自分の経験のなかで自分達の答えを見つけて、上の人達の経験のいい所取りをして新しい価値観のなかで自分を信じて続けて欲しいなと思います。
−この情報社会で生きている若者達のなかで光る存在というのはどういう人だと思いますか?
結果、器用な子なのかなと思っています。吸収力があって勘がいい子。僕が過ごしてきたなかに無駄な時間はないですけど、そのなかでも正直ちょっと無駄だなと感じることがあって、けど無駄な時間があったからこそ人間的に成長できた部分もあったんです。でもそういう子達はそこを通らずに成長できるんじゃないかな。新しい時代が来るのかなっていうのは本当に思います。
森岡祐介/Yusuke Morioka
1984年、兵庫県生まれ。2014年に渡英、Hair Stylist Soichi Inagaki氏に師事。2016年にCoffin Inc(LONDON)に所属。2018年にはeight peace(TOKYO)所属となる。 国内外のファッション誌をはじめ、ブランドのキャンペーンビジュアルや、著名人のヘアスタイルを手掛ける。 |
ILLUSTRATION: ALICE BLOOMFIELD @Bl00MFIELD
INTERVIEW&EDIT: KAHO FUKUDA
DESIGN: AZUSA TSUBOTA
CODING: JUN OKUZAWA