手相はコミュニケーションツール
相手を励ますこともできる
-島田さんの手相はユーモアのあるオリジナルの手相が人気ですが、そういった手相はどうやって作られたんですか?
10年以上前に母から手相を教わって勉強をし始めた頃って、手相の本は本屋さんのいちばん端のほうにあって、表紙もおどろおどろしい感じだったんです。だからそんな本を買う人ってすごく変わった人か占い師しかいなかったんですよ。でも、手相を覚えれば覚えるほどコミュニケーションに使える! と思ったんです。自分のことも相手のことも知れるし、そうすると相手のことを「こういう人だったんだ」ってわかって仲良くなれるきっかけにもなりますよね。なので、もっとポップでわかりやすいほうが盛り上がれると思って、“エロ線”とか“不思議ちゃん線”とか“ユーモア線”みたいにちょっとずつ名前を変えていったんです。
-手相がコミュニケーションツールのひとつに?
ある時、“手相”という字を見ていたんですよ。普通に読むと“手相”だけど、逆から読むと“相手”になるじゃないですか。手相というのは相手と繋がれるものなんだって見えた時があって。手相を使っていろんな人と仲良くなれるツールになれたらいいなと思っています。手相を覚えるといいことが3つあって、1つは所詮占いなんですけど自分のことが知れるというか。自分のことってわかっているようでいちばんわからないですよね。だから自分で手相を見れば「こういう性格なんだ」、「こういう才能があるんだ」って自信がつくと思うんです。2つめは、先ほども言った通りコミュニケーションのひとつとして、人と仲良くなれるということ。3つめは元気のない人を手相で励ますことができるんですよね。これがいちばんいいと思っているんですが、「今、全然ダメなの……」と落ち込んでいる人に、「大丈夫! この線すごいらしいから近々うれしいことがあると思うよ」、「◯◯に向いている線が入ってるよ!」って伝えるとその人もちょっとは自信がつくじゃないですか。そうやっていい方向に気持ちを持っていくことができるから、できるだけ簡単にわかるようにしてみんなにも手相を覚えてほしいんですよ。
-逆に悪いことも見たりするんですか?
そうですね。悪いことというよりも、注意するべき点は絶対にお伝えしています。というのも1つのポリシーとして、当たるかわからない占いで人を暗い気持ちにしてどうするんだって思っているので、自分が手相を見る時は見終わった時に相手が「よし、頑張ろう!」って気持ちになるような占い方をしたいんです。だから、テレビでいろんな手相を紹介するなかで、「絶対にこれがあったら近々いいことがありますよ、っていう線だけは伝えさせてください」と制作側にお伝えするんです。よく「島田いいことしか言わないじゃん」と言われることもありますが、テレビって何万人の人が見てくれていて、そのなかで1人や2人でも落ち込んでいる人や生きるのが苦痛になっている人がいる。でも、その人にちょうど紹介した線が入っていたことで「もうちょっと頑張ってみよう」って思ってくれる人が1人でもいたらいいなって思っているから手相占いをしているんです。手相っていろんな線があるからいい線もあれば悪い線もある。だからこそダメな手相でも絶対にいい線はあるんですよね。
-今までで当ててよかったなと思うことはありますか?
でもやっぱり結婚線にフィッシュがあると結婚が近い予兆で、全然恋愛もしていないし好きな人もいないしって言っていたのに、「本当に偶然な出会いで結婚が決まったんです!」とか、「婚活を頑張って本当に結婚が決まったんです」って言われるとラッキーパンチですけど、きっかけの1つになれて良かったなと思いますね。
-島田さん自身が悩んでいる時は、ご自身の手相を占うこともありますか?
ありますよ。やっぱり人に言うにはまず自分を実験台にしなきゃと思っているので。手相だと結構アバウトなので生年月日を見て、この日に本を出そうとか、この日に引っ越そうとか細かい日にちまで占っています。
-心理学を学んでいると伺いましたが、学ぼうと思ったのはなぜですか?
本当は高校卒業の時に進路で迷っていて、もともと心理学のカウンセラーになりたかったんです。というのと、占いをしていると本当に悩んでいる人は占いの結果が出た後、悩み相談になってくるんですよ。そういった時に上手く伝えるにはどうしたらいいんだろう、どうやってアドバイスしたらこの人はより良くなれるんだろうかと考えた時に、心理学を勉強したほうがいいなと思って、通信ですが4〜5年前くらいから通い始めました。
-実際に心理学は占いにどう活かされていますか?
伝える順番や、どういう目線、どういう声のトーンで話したらいいかとか、参考になることはたくさんあります。座るタイミング、立ち位置、話を聞き出すにはメモを使わない、目を見ないとかいろいろあるんです。例えば、喫茶店で相談する側の人が壁側に座ると、いろんな人がひっきりなしに目に入って気が散っちゃって話せないですよね。だから僕が壁側になることで、注意散漫にならずに僕だけに集中して話せるようになるんです。あとは、自分が光を背負うとかね。間接照明でもいいんですけど、自分が光を背負っていると相手が自分を見る時に顔がしっかり見えなくなるじゃないですか。僕の顔がしっかり見えないから深い話まで話しやすくなるんですよね。それに、後ろに光があると後光効果といって、人間は無意識のうちに光が差し込んでいる人の話を「すごい!」って思って話を聞こうという気持ちになりやすいんです。
-話す環境を演出するんですね。そういった状況のなかでどういった話し方が効果的ですか?
心理学でよく言うのが“ポポネポの順番”で話すとか。“ポポネポ”というのはポジティヴ・ポジティヴ・ネガティヴ・ポジティヴということ。人間って好かれようと思って自分のいいところばかりを言ってくれる人を「こいつうさん臭いな」って思ってしまうんですよ。でも、1個ネガティヴな情報を言うと「あ、この人悪い部分も言うんだ。この人なら信じられるな」って信じてくれるんですよね。通信販売でもそうですが、家電を売る時も「このデジカメ、最新式でめちゃくちゃ画素数がすごいんですよ! ただ、ぶっちゃけたことを言うと最新式すぎてプロでも使えるくらいなので一般の方が使いこなすにはちょっと良すぎてしまう部分があるかもしれないです。ただ、この号数でこの値段だったらめちゃくちゃお買い得ですよ!」ってポポネポの順番で紹介すると消費者は「この人すごいな」って思うわけですよ。では、占いではどうなのかというと、「こういう魅力があって、この部分がめちゃくちゃいいから頑張ったほうがいいよ。ただ、こういうところがあるから直したほうがいいですね。それを直したらこんないいことがありますよ!」と伝えると全体的に信じたくなるというか、ちゃんと自分の悪い部分も指摘されているけど、占いを聞き終わった後に元気になる順番になりますよね。
-これは今すぐにでも実践したい話術ですね!
あとは、最初はできるだけ「でも」を使わないようにする。「でも」って絶対逆説の言葉でブレーキをかけてしまうんです。それから、「なるほど」と「勉強になりました」は勉強になっていない時に言う言葉なんですよ。「なるほど」は何もリアクションがない時に使える便利な言葉なんですけど、会話を終わらせてしまう言葉なんですよね。本当なら相手からもっといい情報を引き出せたのに、「なるほど、勉強になりました」って言った瞬間に相手は「はい、そんな感じなんですよ」で終わっちゃうから。
-「なるほど」は無意識の間に何度も使ってしまいがちですよね。では、「なるほど」に代わる上手い切り返し方とは?
意識的に「なるほど」って言わないで会話してみよう、「でも」「だって」っていう“D言葉”をやめようって普段から練習したほうがいいと思います。「なるほど」とか「でも」ってみんな癖になっちゃってるんですよ。でも、これは知らず知らずのうちに相手にブレーキをかけているんですよね。「わかります。でも、こういうこともありますよね?」って癖で「でも」を使ってしまうんですけど、相手は反対されたって思っちゃう。だったら、「わかります。あとは何かありますか?」とか「あとはこういうこともありますよね?」って言えばいいのになって思います。そうすれば相手が「この人話しやすいな。また会いたいな」って思うようになってくる。結果それは、聞き上手ということなので、いちばんの話し上手は聞き上手って言いますよね。
-これまでお話を伺っていて、島田さんは話し上手であり、聞き上手なんですね。
いえ、僕は全然できないんですよ! テレビの世界で、MCの人が「今日の仕事上手くできた」って思う時は相槌だけで終われた時っていうんですよね。自分の話を一切しないで、ずっとゲストの話だけで終わった時はいちばん上手くいった時。みんな恋愛でも仕事でも飲み会でも「盛り上げなきゃ!」って面白い話を用意したりネタを仕込まなきゃって誤解しがちなんですけど、それをやったところで多少は盛り上がるかもしれないけど、相手が「この人また会いたいな」って思ってくれるかといったらそうでもないんですよ。久しぶりに会いたいな、電話したいなって思う時って、自分の話をする人じゃなくて、話を聞いてくれる人に電話するじゃないですか。とにかく気持ち良く話を聞いてくれたってほうが何倍も好かれるというデータが実際に出ていますからね。
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島田秀平/Shuhei Shimada
1977年12月5日生まれ。ホリプロコム所属の手相占い師芸人。1,000人以上の芸能人の手相を鑑定した。ユーモア溢れる「島田流手相術」が人気となり、テレビ・雑誌などで精力的に活動中。2019年8月1日よりYouTubeチャンネル『島田秀平のお怪談巡り』がスタート。登録者数5万人を突破する。(2019年12月現在) |
COLLAGE: NATSUMI IHARA @ihara_natsumi
INTERVIEW&EDIT: KAHO FUKUDA
DESIGN: AZUSA TSUBOTA
CODING: JUN OKUZAWA