近年、鑑賞者が驚きや発見をすることができる体験型イベントが話題を呼んでいるが、『Malformed Objects』はユニークな参加方法を提案するエキシビジョンと言える。エントランスに用意されたA3サイズの用紙には、展示全体のマップ、来場者への指示、各展示物のコンセプトが書かれている。来場者はその「指示書」に目を通し、「指示書を読まない人(通行人)・従わない人(観察者)・従う人(制作者)」の3つの中から好きな役割を自由に選択することができる。
きっとあなたは、本展が開催されている山本現代へ行くために、新アートスポットとして注目を集めるTERRADA Art Complexの業務用エレベーターに乗り込むだろう。そしてドアが開いたら、まず思い出して欲しい。この展示では「指示書が用意されている」ということを。それさえ頭に入れておいてもらえれば、あとは自分の好きなように展示を楽しむだけ。
もう一つ、この展示を楽しむために覚えておいて欲しいことをあげるとしたら、それは小難しく思える作品も理解をすれば「なるほど」と頷きたい気持ちになる、ということ。『Malformed Objects』は、来場者に役割を与えることでその身体を空間に巻き込み、あなたが「理解」に辿り着けるように新しい道筋を示してくれる。
キッカケはSNSで見かけたヴィジュアルで構わない。重要なのは、そこへ行き、目の前に広がる空間と個々の作品に対して、あなたが何を感じて何について考えるのか。