CULTURE
2017.12.13
あなたを新時代へと導くデジタルアートの祭典『MUTEK.JP 2017』をリポート!
そんな『デジタルアート』と呼ばれる新たなクリエイティヴィティにスポットを当てるイベント『MUTEK.JP 2017』が11月3~5日、日本科学未来館で開催された。VR技術を駆使した映像やエレクトロニックミュージックなどが入り混じるアート作品が存分に披露されたイベントの様子をシェア!
『MUTEK』は、カナダ・モントリオールで2000年にスタート。開催の度にデジタルアート&エレクトロニックミュージックの新たなアーティストや表現方法を世に知らしめ、今やバルセロナやブエノスアイレスなど世界中で開催されるビッグイベントへと成長。第2回目となるMUTEK.JPでは、10年前から日本のエレクトロシーンを牽引し続けるDE DE MOUSE、NYLON.JPでもフィーチャーしたハイブリッドなアートユニットNONOTAK、クラブミュージックカルチャーをベースに独自のスタイルを築き上げるMyriam Bleauなど国内外からアーティストたちが集結。イベントは『昼のプログラム』『夜のプログラム』に分かれ、前者ではアーティストが登壇したトークセッションやワークショップ、後者ではアーティストたちのライヴパフォーマンスはもちろん、テクノロジーを体感できるインスタレーションも開催。ディスプレイの中に飛び込んだような“没入体験”に、来場した7000人のオーディエンスが酔いしれた。
NYLON.JPでは、出演アーティストの中から注目の3組にインタビュー。彼・彼女たちの視線が見据えるデジタルアートの魅力や未来の展望を探ったよ。
プログラミングを用いた映像表現で坂本龍一やPerfumeなどのアーティストの作品を手掛け、国際的に評価されるクリエイター 真鍋大渡と、ケンドリック・ラマーのプロデューサーとして知られレディオヘッドやThe xxなどのリミキサーでもあるNosaj Thingのコラボレートユニット。ライヴパフォーマンスでは、2人それぞれの個性が反映されたオーディオヴィジュアルセットを披露。
-2人がコラボレーションしようと思ったきっかけは? DAITO MANABE(以下D):最初にコラボしたのは、2008年だったね。 NOSAJ THING(以下N):そうそう。新しいアイディアを探してリサーチしていたらDaitoを見つけて、面白そうだと思った。すぐにコンタクトしたんだけど、彼が僕の音楽を知っていて驚いたよ! まだファーストアルバムも出してなかったのにね。 -音とヴィジュアルをミックスさせた2人のライヴパフォーマンスの成り立ちについて教えてもらえますか? D:“ライヴで何が起こっているか”を全てヴィジュアライズして、観客に見せたいと思ったんだ。生バンドのコンサートが主流だった時代に伝わらなかった部分を可視化したかった。NosajがPCで作り、鳴らす音楽の構成を僕が可視化しようとしたのが始まり。 −デジタルアートの魅力とは何だと思いますか? D:現実と仮想現実の境界を体験できることだね。デザインされた仮想現実と現実を対比させることで“現実とは何か”という意味が感じられるんだ。 N:そう、だから僕らのプロジェクトも『NO REALITY』。現実の代わりとなる仮想現実、それがコンセプト。 |
DAITO MANABE |
カナダ・モントリオールを拠点に活動するトラックメイカー、パフォーマー。クリアアクリルで自作したスピニングトップ(日本の独楽のような物)を使用したパフォーマンスを行う。これにはセンサーが内蔵されていて、その動きのデータで音楽的アルゴリズムを伝達する楽器の役割を持つ。
ーメディアアートを始めたキッカケを教えて。 小さい頃から音楽に触れていて、18歳の時にメディアアートを始めたの。MUTEKみたいなフェスにも遊びに行っていたわ。生楽器と電子音楽の両方に馴染みがあったから、その二つをミックスさせたものを作りたいと思ったの。 ーパフォーマンスで使っていた機材「Soft Revolver」はヒップホップとDJカルチャーからきているんだよね。 昔、すごくヒップホップにハマっていてよくイベントに出掛けたわ。プロジェクトの中で楽器のプロトタイプを作りたいという思いがあって、初めて作ったアクリルの楽器がターンテーブルのようなものだったの。そこからアイデアが膨らんでSoft Revolverが誕生したの。 ー尊敬しているアーティストを教えて。 前にメキシコのMUTEKで見たことのある、スウェーデンのPeder Mannerfelt(ペダー・マニフェルト)のエレクトロミュージックがとても好きよ。あとはイギリスのMark Felt(マーク・フェルト)にはとても影響を受けているわ。実はSoft Revolverも彼無しでは生まれなかった作品よ。音やコンセプトにいつも感銘を受けるの。それからアメリカのヒップホップアーティストのDevin The Dude(デヴィン・ザ・デュード)も是非チェックしてほしいわ。 |
Myriam Bleau |
カナダ・モントリオール出身のPush 1 stopとWoulgの2人から成るプロジェクト。創造と崩壊により紡がれるWoulgのダークサウンドランドスケープに、モーションデザインと3Dを駆使したエレガントかつ複雑なPush 1 stopのヴィジュアルが混じり合うパフォーマンスは、鑑賞者に予測不可能な旅の中でアイデアを見つけ出す術を与えてくれる。
−あなたたちがデジタルアートを選んだ理由は何? Woulg(以下W):意識してデジタルアートをやろう、と思ったわけじゃないと思う。最初はイラストや写真をやっていて、初めてデジタルアートを観た時、そのシャープなヴィジュアルに魅了されたのは確か。でも、やり始めてからは、「人と人との繋がりを作る」という点でデジタルが優れていると思う。 Push 1 stop(以下P):いつの時代もアートはメッセージとして機能してきたけど、デジタルアート・メディアアートと呼ばれるものなら世代を超えたメッセージを作れる。デジタルアートは未来を予言できるし、常に更新できる。デジタルでないものは作られた時点の過去のものだ。 −モントリオールの女の子たちは、みんなデジタルアートに興味を持っているの? W:そうね。モントリオールはデジタルアートの首都のようなものだし。 P:みんなMUTECみたいなフェスにもよく行くし、実際作ってる子も多い。ただ、特に女性のアーティストが多いってわけじゃなく、男性と半々じゃないかな。 W :うん、でも今まさにシーンが変わり始めてるって気がする。アジアも含めて世界中から女性アーティストが集まってきているわ。今後も増えていくんじゃないかな。 −今後の目標は? W:私の最終的なゴールは人々を繋げる事。アートは言葉以外で唯一自分を表現できるものだし、テクノロジーは進歩することによって人々に繋がりをもたらしてくれる。テクノロジーを使ったアートは、あらゆる方法で私たちを繋げてくれるはずだわ。 P:人々の感情に問いかける音楽をやりたい。人の感情は一人一人違っているけど、音は感情を結びつける効果がある気がする。これが僕が音に興味を持つ理由だね。 |
Push 1 stop |
MUTEK.JP
mutek.jp
EVENT PHOTO: YU TAKAHASHI, RYU KASAI, SHIGEO GOMI / ©MUTEK.JP
SNAP PHOTO: NOBUKO BABA
TEXT: SHO IKOMA
EDIT: SAKI YAMADA