CULTURE
31曲と共に紡がれるラブストーリー『WAVES/ウェイブス』
『WAVES/ウェイブス』
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映画にはこういう表現もあるのか! こんなふうに感じるものなのか!『WAVES/ウェイブス』はそんなふうに新しい感覚を味わうことのできる映画です。
物語としては2部構成になっていて、前半は兄タイラー(ケルヴィン・ハリソン・ジュニア)、後半は妹エミリー(テイラー・ラッセル)に焦点をあて、“ある出来事”をきっかけにこの兄妹がそれぞれどんな人生を歩んでいくのか、困難に立ち向かう姿を描いています。
タイラーは将来を嘱望されているレスリングのスター選手で、美しい恋人のアレクシスとの関係も順調のはずでしたが、思いがけない運命が彼を待ち受けていた……。一方、エミリーは兄の影で目立たない少女で、誰にも打ち明けられない悩みを抱えていた……。とある家族、とある兄妹に起きた悲劇的な事件を、兄タイラーの物語として妹エミリーの物語として描くことで、観客は、もしも自分がタイラーの立場だったら? エミリーの立場だったら? 異なる立場からさまざまな感情と思考が揺さぶられるのです。
その揺さぶり方、表現がユニーク。俳優たちの繊細な演技はもちろんですが、キャラクターの心理状態の変化に伴って、カメラワーク、色彩、画面の比率、音楽が変わっていく。そんなの映画なんだから当たり前じゃない? って思いますよね。音楽で言えばミュージカルは曲で心情を表していますから、そういう意味では王道な手法です。
しかしながら、音楽だけでなくカメラワーク、色彩、画面の比率、そしてストーリーすべてが計算されたうえで融け合うと、おや!? これは新しいかも……と思ってしまう。たとえば、タイラーが青春を謳歌している冒頭のシーンの画面の比率は広いけれど、彼の状況が悪くなるにつれて画角は狭くなる、それがとても分かりやすく描かれている。意識して見ると、もう発見だらけです。
なかでも音楽はもう一人の主役です。トレイ・エドワード・シュルツ監督が「ある意味でミュージカルのような作品」と語るように、登場するのは、今の音楽シーンをリードする豪華アーティストたちが手掛ける31曲! シュルツ監督は本編に使用する楽曲のプレイリストを事前に作成し、そこから脚本(物語)を組み立てていったそうで、そのアイデアも面白い。公式ホームページでは31曲+オリジナルスコア=39曲分の楽曲解説があるので、映画を観た後に解説を読むとより感動が深まるはずです。
『WAVES/ウェイブス』というタイトルからは、どんな映画なのか掴みきれないかもしれないですが、ラブストーリーです。いろんな視点で愛を捉えて、考えて、感じて、いろんな方向から揺さぶられる──見逃してほしくないラブストーリーです。
音楽の力度 |
★★★★★
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映像美度 |
★★★★★
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ラブストーリー度 |
★★★★★
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監督・脚本
トレイ・エドワード・シュルツ
出演
ケルヴィン・ハリソン・Jr
テイラー・ラッセル
スターリング・K・ブラウン
レネー・エリス・ゴールズベリー
ルーカス・ヘッジズ
アレクサ・デミー
配給
ファントム・フィルム
7月10日(金)より TOHO シネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
©︎2019 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.
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