CULTURE
ジョニー・デップの新たな挑戦『MINAMATA−ミナマタ−』
『MINAMATA−ミナマタ−』
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目の前に映っている俳優は、本当にジョニー・デップだろうか。今さら彼を説明する必要はないくらい、あまりにも有名な俳優ですが、そんな彼の作品を数多く観てきたとしても、こんなジョニー・デップは観たことがなかった、と思うジョニー・デップが映画『MINAMATA−ミナマタ−』のなかにいました。
彼が演じるのは、史上もっとも偉大なフォトジャーナリスト、W.ユージン・スミス。また、今回は演じるだけでなくプロデューサーも兼任。もともと「なぜかW.ユージン・スミスに、昔からとても興味がありました」という写真家ユージンと、当時彼の妻だったアイリーンが1975年に発表した1冊の写真集「MINAMATA」を映画化したのです。
タイトルからも分かるように、描かれるのは、熊本県水俣市のチッソ工場の廃水が原因となった日本の四大公害病のひとつ“水俣病”です。日本人なら誰もが知っている──はずですが、この映画を観ると、知っているようで実は深くは知らない水俣の物語の真実に驚きます。しかもジョニー・デップをはじめ、名優揃いではないか!と興奮してしまう俳優たちの素晴らしい芝居を通して知ることができる。そして、ユージンの撮る写真の力強さと美しさに、完全に心を奪われてしまう。劇中のなかで、ユージンが被写体に向けて「beautiful」と言葉を漏らすシーンがありますが、確かに美しい。その美しさを自分自身が共有できていることに感動するのです。
前半はユージンというカメラマンがどういう人間であるかを描き、彼が熊本県水俣市を訪れてからは、水俣の人たちに主軸が移っていきます。ユージンというカメラマンの物語というよりも、彼が水俣市を訪れたことによって見えてくる水俣の物語。そこには、今を生きる私たちへの大きなメッセージ──こういう悲しい出来事があったという過去ではなく、その出来事の影響は今も続いていること、同じような出来事が世界にも起きていて、環境や人間の命を省みない人たちによって世界は汚されていること、自然を破壊していいのか、と疑問を投げかけてきます。
自分自身が直接関わっていなかったとしても、自然を破壊して、自然を汚して生産されたものを利用しているとしたら……そんなことも考えるでしょう。私たちの生活はどんどん便利になっていく、けれどその便利さは本当に必要なのだろうか。この先、生きていくなかで私たちはどう生きるべきなのか。大きな問いを投げてきます。
重いテーマであり、かつ自国が舞台となると、目を背けたくなる気持ちもあるでしょう。それでも、知ってほしいと思う。都合の悪いことを隠蔽してしまう国や企業に一石を投じる作品であることはもちろん、私たちひとりひとりが知るべき物語でした。
知るべき度 |
★★★★★
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写真の力度 |
★★★★★
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環境問題度 |
★★★★★
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製作
ジョニー・デップ
監督
アンドリュー・レヴィタス
出演
ジョニー・デップ、真田広之、國村隼、美波、加瀬亮、浅野忠信、岩瀬晶子、and ビル・ナイ
配給
ロングライド、アルバトロス・フィルム
9月23日(木・祝)TOHOシネマズ 日比谷他全国公開
© 2020 MINAMATA FILM, LLC
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