CULTURE
どうしたって心を揺さぶられる『カモン カモン』
『カモン カモン』
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SNSというツールの登場で、目の前にいない相手であっても、いつでも何処にいてもコミュニケーションが成り立つ時代です。けれど、本当の意味で、相手と向きあっているだろうか、相手の話を聞いているだろうか、コミュニケーションって何だろう、会話をするってどういうことだろう、そんな当たり前すぎることを考えさせてくれるのが、今回ピックアップした映画『カモン カモン』。決して説教くさい映画ではなく、ごく自然に、とても自然に、考えさせてくれるのです。
物語の中心となる登場人物は、ラジオジャーナリストのジョニー(ホアキン・フェニックス)と、彼の甥ジェシーです。ジョニーの仕事は、アメリカ中を回り子供たちにインタビューすること。とある理由から甥のジェシーを預かることになったジョニーは、仕事をしながら子育てを疑似体験することになります。
何も知らない主人公が一夜にして子育ての厳しさを知る映画、という情報だけだと、十代、二十代の層には響かないかもしれません。でもそこには、どうやって人は相手に心を開くのか、どうやって信頼が生まれるのかが描かれている。映画のなかで、ジェシーがジョニーに問いかけるシーンがありますが、その真っ直ぐな問に、自分ならどう答えるだろうかと考えたりもします。ジェシーとジョニーを通して教えてもらうのは、自分は本気で相手の話を聞いているかな、本気で相手の話に耳を傾けているかな、という気づきです。
観る前は、甥のジェシーが普段と違う環境で生活することで成長していく話かなと思ったりもしましたが、実はその逆、大人が子供からたくさんの気づきをもらう映画でした。観終わったあとには何とも温かい気持ちに包まれて、そうそうマイク・ミルズ監督の作品はいつだって、こういう気持ちに包まれるんだよな、と思うわけです。
最後に少しだけ監督の話を。この映画に原作はありません。物語が生まれるヒントになっているのは、監督自身が父親になり、子供と向きあったとある瞬間だったそうです。振り返ってみれば、マイク・ミルズ監督は、『人生はビギナーズ』では自身の父親との関係を、『20センチュリー・ウーマン』では母親との関係を物語のベースにしていました。そして今回は、大人と子供という関係性で物語を紡いだ。
この映画と出会えてよかったと心の底から思える、その映画から受け取った気づきをずっと大切にして生きていく、そんなふうに宝物のように感じる映画は実はそう多くはなくて。でも、マイク・ミルズ監督の映画はどれも、出会えてよかったと思えるものばかり。もちろん『カモン カモン』もそのひとつです。
モノクロの美しさ度 |
★★★★★
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ロードムービー度 |
★★★★☆
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ホアキンに魅了される度 |
★★★★★
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監督・脚本
マイク・ミルズ
出演
ホアキン・フェニックス
ウディ・ノーマン
ギャビー・ホフマン
モリー・ウェブスター
ジャブーキー・ヤング=ホワイト
音楽
アーロン・デスナー
ブライス・デスナー(ザ・ナショナル)
配給・宣伝
ハピネットファントム・スタジオ
4月22日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか、全国ロードショー
© 2021 Silva Mysterium, Hobab, Film i Väst
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