CULTURE
その感情をその愛をどう表現したらいいのだろうか?『流浪の月』
『流浪の月』
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主演は広瀬すずと松坂桃李。共演は横浜流星、多部未華子、趣里。監督は『フラガール』『悪人』『怒り』などで知られる李相日監督。原作は2020年の本屋大賞を受賞した凪良ゆうの小説「流浪の月」。この組み合わせ、そそられますよね。そそられたその感情は、映画を観始めると徐々に、ゆるやかに、大きく膨らんでいき、胸のなかが何と表現したらいいのか分からない感情で埋め尽くされるのです。
帰れない事情を抱えた少女・更紗と、彼女を家に招き入れた孤独な大学生・文。無情にも2人は「誘拐犯」と「被害女児」とされ離れ離れになりますが、15年後、偶然に再会して……。
ストーリー的にはとてもシンプルですが、世間から見た2人の関係性と本人たちしか分からない関係性に、こんなにもズレがあるのか、こんなにも残酷なのかと、正直、映画を観ている間ずっと胸が苦しい。話したくても真実を話すことができず、心に傷を抱えたまま生きる者たちが、それでも生きようとする。理解されることもなく、支えられることもなく、世間はなんて残酷なのだろうと苦しくなる。それでも、人は、たった一人でいい、理解してくれる人がいるだけで強くなれるのだと、温かさに包まれる。理屈では説明できない感情が映し出されます。映し出されるというよりも、映像を通してこらえきれずに滲みでてきた感情が、観客の心に吸い寄せられ染み込んでいく、という表現があっているかもしれません。
この映画の撮影は、ホン・ギョンピョに託されました。映画ツウでないかぎり撮影監督の名前まで把握していないものですが、『パラサイト 半地下の家族』の撮影監督といえば、何となくその凄さが伝わるのではないでしょうか。李相日監督がホン氏にお願いしたのは、『パラサイト』や、それ以前の『バーニング』という作品の空気感──「一つ一つのカットがとにかく濃密で力強い。特に『バーニング』のどこか不穏で艶のある空気感で『流浪の月』をイメージすると、どこまでも昂揚感が高まりました」という理由で依頼したそうです。
俳優の芝居が素晴らしい、監督の演出が素晴らしい、原作や脚本が素晴らしい、と言われることは多々あっても、撮影監督が素晴らしいというのは、(映画の世界では当然でも)一般的にはなかなか伝わらないものです。この『流浪の月』は、撮影の凄さが自然と伝わってくる。わかりやすく言うと、セリフは少ないけれどそのキャラクターの心情が伝わってくる。俳優の演技はもちろんですが、カメラが捉えるものが、カメラの視点が、感情のひとつになっている。それを自然と感じる映画です。
ほんの少しでも、この映画にそそられる何かを感じたら、それが自分のなかでどう変化するのか、映画館で確かめてほしいのです。
俳優たちの芝居の凄さ度 |
★★★★☆
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愛という感情を考える度 |
★★★★★
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カフェcalicoの雰囲気度 |
★★★★☆
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原作
凪良ゆう「流浪の月」(東京創元社刊)
撮影監督
ホン・ギョンピョ
音楽
原摩利彦
製作総指揮
宇野康秀
出演
広瀬すず
松坂桃李
横浜流星
多部未華子
趣里
内田也哉子
柄本明
配給
ギャガ
5月13日(金)全国ロードショー
©️2022「流浪の月」製作委員会
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