CULTURE
2016.02.25
映画を彩る衣装に注目! アカデミー賞 衣装デザイン賞受賞作品特集
エミリー・ブラントの強さと美しさが光る代表作 | |
ハリウッド進出作となった『プラダを着た悪魔』以降、目覚ましい活躍をみせるイギリスの女優エミリー・ブラント。最近は、トム・クルーズ主演の『オール・ユー・ニード・イズ・キル』で美しい戦士、アカデミー賞(撮影賞/音響編集賞/作曲賞)にノミネートされている『ボーダーライン』(4月9日公開)ではFBI捜査官など、強くたくましい役が続いています。そんな彼女のラブストーリーとしての代表作のひとつに『ヴィクトリア女王 世紀の愛』があります。 エミリー・ブラントが演じるのはヴィクトリア女王。七つの海を支配し、イギリスを「太陽の沈まない帝国」と呼ばれるまでに押し上げた強い女性です。そんなヴィクトリアの偉業とともにメインで描かれるのは、彼女を支え続けたアルバート王子(ルパード・フレンド)との出会い、結婚、すれ違い……史上最高の理想のカップルとして語り継がれるまでの2人の歴史。国を動かす強い女性の背景に、こんなにもドラマチックな恋愛物語があったのか! イギリス王室にはこんなことがあったのか! 知られざる史実を垣間見ているという点でも驚かされます。 そして、華麗なるヴィクトリア朝時代の衣装を担当するのは、『恋におちたシェイクスピア』でもお馴染みのサンディ・パウエル。結婚式の白いウエディングドレスを世界に広めたのはヴィクトリア女王という説もあり、この映画のなかでも素敵なウエディングドレスが登場します。イギリスの絶頂期が舞台とあってファッションもエレガントで優雅! 芸術級の衣裳の数々、必見です! 【第82回】2009年 アカデミー賞衣装デザイン賞受賞 『ヴィクトリア女王 世紀の愛』 DVD発売中 発売元:ギャガ 販売元:ハピネット 価格:¥3,800(税抜) |
監督 ジョン=マルク・ヴァレ 製作 マーティン・スコセッシ 脚本 ジュリアン・フェロウズ 衣装 サンディ・パウエル 出演 エミリー・ブラント ルパート・フレンド ポール・ベタニー ©2008 GK Films, LLC All Rights Reserved |
マリリン・モンローをよりセクシーにするドレスたち | |
セックス・シンボルとして、謎の死を遂げた女優として、歴史にその名前を刻むマリリン・モンロー。少し前には、彼女の伝記映画『マリリン7日間の恋』やドキュメンタリー映画『マリリン・モンロー 瞳の中の秘密』などが作られていますが、実はマリリン・モンロー自身が出ている映画は観たことがない……という人もいると思います。そんな初心者におすすめなのが、ゴールデングローブ賞主演女優賞 (ミュージカル・コメディ部門)に輝いた『お熱いのがお好き』。しかもこの映画、アカデミー賞では衣装デザイン賞を受賞しているので、モノクロ映画ではありますが衣装に釘付けです! 物語の舞台は禁酒法時代のシカゴからフロリダへ──。とある事件現場を目撃したことでマフィアに追われるはめになったサックス奏者のジョー(トニー・カーティス)とベース奏者のジェリー(ジャック・レモン)は、女装をして女性楽団に紛れて逃げることにします。そこで出会うのが歌手のシュガー(マリリン・モンロー)。彼らは無事にマフィアから逃げることができるのか、彼らを女だと思って接するシュガーとの関係はどうなるのか、とても面白いコメディです。 マリリン・モンローのセクシーさを最大限に引き出しているヌーディーな衣装を担当するのはオリー=ケリー。『風と共に去りぬ』や『カサブランカ』といった名作の衣装を手掛けてきたコスチュームデザイナーで、『巴里のアメリカ人』『魅惑の巴里』『ジプシー』、そして『お熱いのがお好き』の4回アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞しています。シュガーのステージ衣装がとにかく色っぽい! 【第32回】1959年 アカデミー賞衣装デザイン賞受賞 『お熱いのがお好き』 Blu-ray発売中 販売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン 価格:¥1,905(税抜) |
監督・製作・脚本 ビリー・ワイルダー 衣装 オリー・ケリー 出演 ジャック・レモン トニー・カーティス マリリン・モンロー ©2014 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. |
唯一無二のウェス・アンダーソン監督の世界 | |
ウェス・アンダーソン監督と言えば、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』のラコステのワンピースとアディダスのジャージ、『ライフ・アクアティック』の赤いニット帽とブルーのコスチュームとアディダスのスニーカー、『ダージリン急行』のマーク・ジェイコブスによるスーツケースなどこだわり方が凄い! 次はどんな世界を見せてくれるのか新作のたびに期待を寄せてしまう監督です。 この映画はヨーロッパの山奥にある最高峰のグランド・ブダペスト・ホテルが舞台。ある日、ホテルの常連だった伯爵夫人が殺され、遺産の絵画の受取人であるコンシェルジュのグスタヴ(レイフ・ファインズ)に容疑がかかり、謎を解くためにホテルからヨーロッパ大陸へと駆け回る壮大なミステリーです。ストーリーの面白さもさることながら、こんなホテルがあるなら泊まってみたい! と思ってしまうホテルのセットがとにかく素敵! 衣装も素敵!──たとえばマダムDの衣装はオーストリアの象徴派の画家グスタフ・クリムトの絵を参考にして作られています。クリムトといえば、この映画コーナーで紹介した『黄金のアデーレ 名画の帰還』のあのクリムトです。 そんな彼のイメージを具現化するのは衣装デザイナーのミレーナ・カノネロ。この作品を含めて過去8回ノミネート、うち『バリー・リンドン』『炎のランナー』『マリー・アントワネット』、そして『グランド・ブダペスト・ホテル』の4回受賞しています。衣装も舞台セットも一見の価値ありです! 【第87回】2014年 アカデミー賞衣装デザイン賞受賞 『グランド・ブダペスト・ホテル』 DVD / Blu-ray発売中 販売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン 価格:DVD¥1,905(税抜) / Blu-ray¥2,381(税抜) |
監督・製作・原案 ウェス・アンダーソン 衣装 ミレーナ・カノネロ 出演 レイフ・ファインズ F・マーレイ・エイブラハム エドワード・ノートン ©2015 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved. |
色褪せない名作、ラブストーリーの金字塔 | |
ハリウッド最強のヒットメーカーとして君臨し続けるジェームズ・キャメロン監督が、いまやハリウッドを代表する名優となったレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットを主演にむかえて挑んだ、世紀の超大作にしてラブストーリーの金字塔。アカデミー賞では作品賞、監督賞など11部門を独占している名作です。 物語の舞台は1912年。処女航海で沈没してしまった英国の豪華客船タイタニック号の艱難事故をベースに、船で出会った上流階級の娘ローズ(ケイト・ウィンスレット)と画家を目指す貧しい青年ジャック(レオナルド・ディカプリオ)との許されない恋物語を描いていきます。母親が勝手に決めた結婚から逃げ出したくて海に身を投げようとしていたローズをジャックが助けたことで2人は出会いますが、船が氷山に接触してしまったことで2人の運命は大きく変わり……。沈みゆく船とともに最後まで愛を貫こうとするジャックとローズに涙してしまう、結末を知っていても何度観ても感動してしまいます。 そんなドラマチックさに一役買っているのが、メインの役者に加え1000人を越えるエキストラの衣装の数々。可能な限り当時を再現するために世界各国から数千点に及ぶワードローブが集められ修復が行われたそうです。欧米上流社会の豪華ファッションを担当したのはデボラ・リン・スコット。『E.T.』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い』『マイノリティ・リポート』『トランスフォーマー』シリーズ、『アバター』など大作を数多く手掛けています。『タイタニック』では何と言ってもローズの衣装の圧倒的な美しさ! いま見ても惚れ惚れします! 【第70回】1997年 アカデミー賞衣装デザイン賞受賞 『タイタニック<2枚組>』 Blu-ray発売中 販売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン 価格:¥1,905(税抜) |
監督・製作・脚本 ジェームズ・キャメロン 衣装 デボラ・L・スコット 出演 レオナルド・ディカプリオ ケイト・ウィンスレット ビリー・ゼイン ©2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved. |
ジバンシイとヘップバーンが絶賛したデザイナー | |
オードリー・ヘップバーン主演のミュージカル映画の傑作です。冴えないヒロインがある出会いをきっかけに素敵なレディに成長していくという物語は映画やドラマでよくある設定ですが、歴史を辿っていくとこの『マイ・フェア・レディ』を参考にして作られたものが多い気がします。ジュリア・ロバーツ主演の『プリティ・ウーマン』もこの『マイ・フェア・レディ』にヒントを得て作られていますし、アメリカの学園もの『シーズ・オール・ザット』や、最近の邦画『今日、恋をはじめます』も設定が似ている! そんな『マイ・フェア・レディ』のもともとのお話はどんなものなのか──ヒロインはロンドンの下町で花を売って暮らすイライザ。下町育ちなので言葉がなまっていて品がなく、そんな彼女を大改造しようとするのが言語学専門のヒギンズ教授です。美しい言葉と礼儀作法を学ぶことで、みるみる素敵なレディになっていくイライザですが、ある日ヒギンズ教授にとって自分は研究対象であること、賭けの対象であることを知って……というロマンティック・コメディ。 下町娘から淑女へと変身を遂げるアイテム、衣装を手掛けたのは英国人のセシル・ビートン。一流の写真家としても活躍するセシルは、この作品よりも前の『恋の手ほどき』でもアカデミー衣裳デザイン賞を受賞しています。ただ、当時のオードリー・ヘップバーンは『麗しのサブリナ』をきっかけにジバンシィの衣装を着ることがおおかった。『ティファニーで朝食を』『おしゃれ泥棒』などもジバンシィが衣装提供をしていますが、そのジバンシィとヘップバーンが揃ってセシル・ビートンの衣装を絶賛したそうです。世界のジバンシィを唸らせた衣装は、本当に美しい! 【第37回】1964年 アカデミー賞衣装デザイン賞受賞 『マイ・フェア・レディ スペシャル・コレクターズ・エディション』 DVD発売中 発売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント 価格:¥1,429(税抜) |
監督 ジョージ・キューカー 製作 ジャック・L・ワーナー 衣装 セシル・ビートン 出演 オードリー・ヘプバーン レックス・ハリソン スタンレー・ハロウェイ My Fair Lady © 1964 Columbia Broadcasting System, Inc., now known as CBS Broadcasting Inc. All Rights Reserved. Packaging Design © 2009 CBS Studios Inc. CBS and related marks are trademarks of CBS Broadcasting Inc. All Rights Reserved. Cover Photo of Audrey Hepburn by Cecil Beaton, Courtesy of Sotheby's London.TM, (R) & Copyright © 2013 by Paramount Pictures. All Rights Reserved. |
史実と虚構が入り混ざって生まれた有名な悲劇 | |
シェイクスピアと言えば、四大悲劇「ハムレット」「マクベス」「オセロ」「リア王」が有名ですが、それ以上に誰もが知っているのは「ロミオとジュリエット」ではないでしょうか。『恋におちたシェイクスピア』は、その「ロミオとジュリエット」がどうやって生まれたのかを、新しい解釈と、史実と虚構と、現実と劇中劇を織り交ぜて描いたロマンチック・ラブストーリーです。 舞台は1593年のロンドン。親が決めた婚約者との結婚に乗り気ではないヴァイオラ(グウィネス・パルトロウ)の夢は女優。ですが、その当時は女性が舞台に立つことは許されていませんでした。そんなある日、夢を諦めきれないヴァイオラはトマス・ケントという青年としてシェイクスピア(ジョセフ・ファインズ)の舞台「ロミオとジュリエット」に出ることに! 面白いのは、劇中劇の恋物語と現実のシェイクスピアとヴァイオラとの恋物語が交差して綴られていくこと。2つの物語によって生まれるのは2倍のロマンス! ドキドキも2倍です! そして、現実と舞台と登場する衣装も2倍! 担当するのはサンディ・パウエル。この『恋におちたシェイクスピア』をはじめ、『アビエイター』『ヴィクトリア女王 世紀の愛』の3作品でアカデミー衣裳デザイン賞を受賞している衣装デザイナー。彼女によって生み出される衣装は本当に美しい! ヴァイオラやシェイクスピアの衣装はもちろん、エリザベス女王(ジュディ・デンチ)の衣装も圧巻です。 【第71回】1998年 アカデミー賞衣装デザイン賞受賞 『恋におちたシェイクスピア』 DVD発売中 発売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント 価格:¥1,429(税抜) |
監督・製作 ジョン・マッデン 衣装 サンディ・パウエル 出演 グウィネス・パルトロウ ジョセフ・ファインズ ジェフリー・ラッシュ コリン・ファース ©1998 Miramax Film corp. and Universal Studios. All Rights Reserved. |
text rie shintani