CULTURE
2014.11.07
『嗤う分身(ワラウブンシン)』
もう一人の自分が現れたら、どうする? |
監督 |
|||||
いったいこの世界はどんな世界なの? 過去なのか未来なのか、それとも現実ではない寓話の世界なのか──物語の舞台となっている奇妙な空間にあっという間に引き込まれたかと思うと、主人公サイモン(ジェシー・アイゼンバーグ)とウリふたつのジェームズが現れ、「どういうことなの?」とさらに引き込まれる。ただでさえ奇妙な世界がどんどん複雑になってく。文豪ドストエフスキーの原作「分身(二重人格)」を映画化した『嗤う分身』は、そんな奇妙な世界で起きる奇妙な出来事を描いた、奇妙な物語。 サイモンは勤続7年にもなるのに存在が薄すぎて名前も覚えてもらえない、優しいけれど内気で要領が悪くサエない男。コピー係のハナ(ミア・ワシコウスカ)に想いを寄せていても話しかけることすらできずにいる。そんなある日、ジェームズという新入社員がやってくる。見た目はサイモンとそっくりだが、中身は正反対。ジェームズはズル賢くて、強気で、要領がよくて、女性にもモテる男だった。そして、ハナはジェームズに恋をしてしまい、おまけに仕事の功績もジェームズにもっていかれてしまう。どうする、サイモン! 自分だけれど自分じゃない、自分じゃないけど自分のよう……という設定は、なぜ? どうして? と次々と疑問が浮上してくるけれど、その謎を突き止めようとすると映画を思いきり楽しめなくなってしまう危険も。「あーあ、サイモンがもう1人出てきちゃったよ」ぐらいの感覚でこの奇妙な世界感に身を置いて観るのが楽しむコツかも。
|
text : rie shintani