CULTURE
2015.06.05
『エレファント・ソング』
『Mommy/マミー』の監督グザヴィエ・ドランが主演を熱望した心理劇 |
監督 |
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惹きつけられる。グザヴィエ・ドランの演技に、病院の一室で繰り広げられる心理戦に、惹きつけられる──。この『エレファント・ソング』はドランが「マイケルは僕だ。この役を演じさせてほしい」と自ら出演を熱望した作品。 物語は、精神医のローレンスが診察室から姿を消したことから始まる。彼がなぜいなくなったのかを知るために病院長のグリーンは最後にその精神医を見たという病院きっての問題児マイケル(グザヴィエ・ドラン)に話を聞くことにする。マイケルの口から出てくるのはゾウの話、オペラの話、とある事件の話、そしてローレンス医師との間に何かあったような含みのある話。事実なのか虚言なのか、単にこの状況を楽しんでいるのか……グリーンはマイケルに翻弄されていく。 散らばっていた会話と会話、誰が何について問いただしていたのかが明らかになると1本の線が浮かび上がってくる。何とも言えない感情がこみ上げてくる。報われない愛への悲しみなのか、失った愛への執着なのか、忘れたい愛との訣別なのか、それは観ている人それぞれに委ねられるものだけれど、言えるのは、それまでに観てきたものすべてにヒントがあり、マイケルが何を考えていたのか、何を望んでいたのか、もう一度、彼の心を読み解きたくなるということ。 1.僕のカルテを読まないこと 2.ご褒美にチョコレートをくれると約束すること 3.看護師長をこの件から外すこと これはマイケルがグリーンに事情を話すために出した条件。映画を観終わったあとこの3つを振り返ると、はっとする。そしてドランの「マイケルは僕だ」の意味の答えを探したくなる。
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text rie shintani