CULTURE
2016.04.15
『獣は月夜に夢を見る』
北欧から届いた美しくて恐ろしくて独創的な物語 | |||||||
デンマーク発の『獣は月夜に夢を見る』は余韻を残す映画だ。デンマークの海岸沿いにある小さな町を舞台にした映像の美しさの余韻、セリフが少ないことによって生まれる空気感の余韻、そしてヒロインに降りかかる運命を彼女がどうやって乗り越えていくのだろうかと考えさせられる余韻。このタイプの映画(たとえばスウェーデン映画『僕のエリ 200歳の少女』のような)が好きな人にとっては、たまらない世界感のはず。 物語は、19歳のマリー(ソニア・ズー)の哀しき運命──抗えない秘密を知り、自身の身体に訪れる変化を受け入れなければならない……というシンプルなもの。子供から大人へ、少女から女へ、普遍的な成長の物語でありながらも、そこに“寓話”が加えられることによって物語はガラリと色を変えミステリアスになる。タイトルにある「獣」の文字や予告動画に映し出される「血」の匂いからは、マリーに待ち受けるものが何なのかぼんやりと想像できるかもしれない。でも、想像は敢えてそこで留めて。事前情報が少なければ少ないほど得られる感動はものすごく大きい。知ることで感動が半減したらもったいない! 監督も新人、主人公の女優も新人。新しい才能から生まれた独創的な物語と美しい映像は、見たことがあるようで見たことがない、聞いたことがあるようで聞いたことがない、引き込まれる映画だ。そして忘れられない映画だ。
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監督・原案・脚本 ヨナス・アレクサンダー・アーンビー 出演 ソニア・ズー ラース・ミケルセン ソニア・リクター ヤーコブ・オフテブロ 配給 クロックワークス 【2014/デンマーク・フランス合作/85分/R15+】 4月16日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー ©2014 Alphaville Pictures Copenhagen ApS |
text rie shintani