CULTURE
2016.07.29
『ヒップスター』
見逃して欲しくない、小粒だけれど感動の大きな秀作 | |||||||
映画に救われるときがある。失敗してもいい、立ち止まってもいい、悩んでもいい──迷うなかでふと気づくことがあって、その時に自分と自分の周りと向きあうことができれば、失敗してもいい、立ち止まってもいい、悩んでもいいのだと──。『ヒップスター』はそんなふうに“こんな自分じゃないのに……”と、誰もが経験するモヤモヤとした感情を肯定してくれる映画だ。 物語の舞台は、サンディエゴのインディーズミュージックシーンの内側。才能あるシンガーソングライターのブルック(ドミニク・ボガート)は、ある出来事がきっかけで、家族と距離を置き、無気力な日々を送っていた。ある日、父と3人の妹が母との約束を果たすためにブルックを訪ねてくる。故郷オハイオに置いたままにしてきた過去と向きあうことで、彼の人生はゆっくりと動き出す……。 監督はデスティン・ダニエル・クレットン。本年度のアカデミー賞で主演女優賞に輝いたブリー・ラーソンの出世作『ショート・ターム』の監督であり、『ヒップスター』は彼の記念すべき長編デビュー作だ。『ショート・ターム』と同様に今回も音楽にこだわり、主人公ブルックの心情を曲で代弁する。音楽を担当するのは、クレットン監督の盟友でシンガーソングライターのジョエル・P・ウェスト(バンド「The Tree Ring」のメンバーでもある)。この映画のために、ドミニク・ボガートをフロントマンとするバンド「CANINES」を結成している。 映画を見たら、『ヒップスター』のサウンドトラックも、映画から生まれた「CANINES」も、ジョエル・P・ウェストが在籍する「The Tree Ring」も、サンディエゴ音楽にも興味が沸き、世界を広げてくれる。
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監督・製作・脚本 デスティン・ダニエル・クレットン 製作総指揮 フレッド・ネイジャー 出演 ドミニク・ボガート アルバロ・オーランド タミー・ミノフ ローレン・コールマン キャンディス・エリクソン 【2012/アメリカ/91分】 2016年7月30日(土)新宿シネマカリテほか全国順次公開! ©2012 Uncle Freddy Productions LLC. |
text rie shintani