CULTURE
2016.11.18
『雨にゆれる女』
名匠を魅了してきた音楽家の初監督作! | |||||||
もともと写真家だった人が映画を撮る、ミュージックビデオのクリエイターやデザイナーが映画監督になるという展開は、数は多くなくとも決して珍しくはないですが、音楽家が映画監督として新しい道を切り開くとなると、それはちょっと珍しい。『雨にゆれる女』はホウ・シャオシェンやジャ・ジャンクーといった名匠を魅了し、彼らの作品の音楽を担当してきた音楽家・半野喜弘の初監督作品です。 工場で働くその男は本名を隠し、飯田健次(青木崇高)と名乗り、人と関わることを避けるように生きていた。ある日、同僚の下田(岡山天音)に頼まれて、理美(大野いと)を預かることになるが、その出会いによって2人の過去が明らかになっていく。なぜ、健次は別人として生きているのか、なぜ、理美は彼の前に現れたのか……。 それぞれに哀しみを背負って生きている男と女が出会う。けれどその2人は、出会ってはいけない2人だった──というサスペンスフルな愛の物語。この映画のテーマは“生きるという事は完璧なまでに不公平である”と監督が語るように、決して明るい物語ではないけれど、とても美しくて、生きていくことがこんなにも切ないものなのかと苦しくなるけれど、どこかファンタジックでもあって、そして雨音をはじめとする音楽が奏でる(物語る)心情が、ずしりと突き刺さってくる──。理解しようとするのではなく感じる映画、ずっと記憶に残る映画です。
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監督・脚本・編集・音楽 半野喜弘 出演 青木崇高 大野いと 岡山天音 11月19日(土)テアトル新宿にてレイトロードショー ©「雨にゆれる女」members |
TEXT RIE SHINTANI