CULTURE
2017.03.31
アカデミー賞作品賞に輝く、愛と家族と和解の物語『ムーンライト』
『ムーンライト』 | |||||||
自分のことは自分が一番よく知っている──と思っているものだが、実は自分を知ること=向きあうことはとても難しい。本年度のアカデミー賞で作品賞・脚色賞・助演男優賞(マハーシャラ・アリ)を受賞した『ムーンライト』は、自分は何者であるのかを探すアイデンティティの物語であり、人が人を愛する純粋な愛の物語だ。 主人公はシャロン。内気でいじめられっ子、母親は麻薬中毒、心の支えは麻薬ディーラーだけれど優しく面倒見のいいフアン、そしてたった1人の友人ケヴィンに惹かれている。監督のバリー・ジェンキンスは言う。「このキャラクターに起こることは、ぜんぶ自分自身か元の戯曲を書いたタレル・アルバン・マクレイニー(脚本)にも起こっていることだ」と。監督自身が語りたいと思うストーリーを語ることによって、観客はシャロンの体験がまるで自分のことのように感じる。人種・年齢・セクシュアリティを越えた感情を描いているから誰もが共感する。 シャロンの幼少期・少年期・青年期、それぞれの年代を3人の俳優が演じているが、シャロンを演じた俳優をはじめ、登場する黒人全員の身体がブロンズのように美しく描かれているのもこの映画の特徴だ。そこにはカラーリストの存在があり、実際の映像に色を足して加工している。今後の映画界の常識が変わるとまで言われている映像美は必見! なかでもラストシーン、ブルーの光のなかに立つシャロンの美しさは格別だ。
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監督 バリー・ジェンキンス 製作 アデル・ロマンスキー デデ・ガードナー ジェレミー・クライナー 製作総指揮 ブラッド・ピット 出演 トレバンテ・ローズ アンドレ・ホランド ジャネール・モネイ アシュトン・サンダース ジャハール・ジェローム 配給 ファントム・フィルム 2017年3月31日(金)TOHOシネマズシャンテ他にて全国公開 © 2016 A24 Distribution, LLC |
TEXT RIE SHINTANI