CULTURE
2013.12.20
『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』
エレガントで美しい吸血鬼に惚れる! |
原題:ONLY LOVERS LEFT ALIVE |
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『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』は吸血鬼のお話。吸血鬼というと、最近は吸血鬼と人間の禁断の恋を描いた『トワイライト』シリーズの影響もあって、吸血鬼=ロマンティック、ファンタジー、ラブストーリーなどを想像する人も多いかもしれない。けれど、ジム・ジャームッシュ監督の手にかかると、同じ題材であっても、同じラブストーリーであっても、こんなにもお洒落に、こんなにもクラシカルに、こんなにもアートな吸血鬼になるのかと驚かされる。 主人公は何世紀も生き続けている吸血鬼のアダム(トム・ヒドルストン)とイヴ(ティルダ・スウィントン)。イヴの妹のエヴァ(ミア・ワシコウスカ)が87年ぶりにやっかいな事件を起こしたり、汚染された血を飲んだ旧友のマーロウ(ジョン・ハート)との別れがあったりするけれど、それ以外は淡々と一組の恋人たちの日常がつづられる。 面白いのは淡々としたなかで交わされる恋人たちの会話のユニークさ。アダムがアンダーグラウンドシーンで活躍する伝説のミュージシャンということで、音楽に関する単語にはじまり、歴史に刻まれるさまざまな言葉がセリフに散りばめられている。たとえば、イヴのもう一つの変名がデイジー・ブキャナンだったり。これは『華麗なるギャッツビー』のヒロインの名前。ほかにも、エディ・コクラン、フィボナッチ、バイロン、ベニテングダケ……セリフを追いかけるのも楽しみ方のひとつ。そして、最後の最後でアダムとイヴに釘付けになるドキッな瞬間が待っている。
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text rie shintani