2000年代初頭からコマーシャル寄りのミュージシャン活動をしていました。けれど活動するうちに、もっと自分のルーツや個性を追求したいと思うようになって、本名のアイシャ・デビにアーティスト名を変えました。2013年頃の話かしら。それからは世界にどう貢献できるのか考えるようになりました。瞑想して自分をとことん見つめ直したり、ベジタリアンを始めたり、何が世の中にとってプラスになるのか意識しています。
CULTURE
2016.11.18
アイシャ・デビが語る、アイデンティティを突き詰めた先にあるファンタジーの世界
好きなブランドの服を買い、それを着てストリートに出掛ける。そこには「この服を着る」という本人の意志と夢がある。誰もが自分の意志で夢を追いかけオリジナルなライフスタイルを築くように、スイスとチベットの血を引く女性ミュージシャンのアイシャ・デビは、一度は軌道に乗った音楽ライフを捨てることを選んだ。そして自分という存在を見つめ直すことで、本来の自分が求めるサウンドにたどり着く。破壊的なビートにダークなシンセ、オリエンタルなボーカルラインで独特な世界を生み出す彼女のアイデンティティはどこからやってくるのだろうか?
2000年代初頭からコマーシャル寄りのミュージシャン活動をしていました。けれど活動するうちに、もっと自分のルーツや個性を追求したいと思うようになって、本名のアイシャ・デビにアーティスト名を変えました。2013年頃の話かしら。それからは世界にどう貢献できるのか考えるようになりました。瞑想して自分をとことん見つめ直したり、ベジタリアンを始めたり、何が世の中にとってプラスになるのか意識しています。
昔からクリエイティヴが好きで、なんとなく音楽には触れていました。学生時代はスイスの優秀なアートスクールでグラフィックデザインを学んでいたんですけど、とても退屈に思えてしまって。1940年代から1950年代にかけて流行したフラットデザインの原点と言われる「スイス・スタイル」を始め、スイスのデザインは世界中の注目を集め続けています。だけど私はもっと自由なスタイルで何かを作りたいと思い、音楽を作ることにしました。それが最も自分に正直な選択だと思ったので。
私はお金持ちではないから、ハイブランドの洋服を買う余裕がないの。だけどファッションで自己表現するのは好きです。自分が着たい洋服を買えないなら、自分でクリエイトするだけ。とてもシンプルなことでしょ? これは音楽に関しても言えることなんですけど、高級な楽器を買うお金がないので、自分が持っている最小限の機材の中でどんな音を鳴らせるのか、いつも研究しています。その方が様々なアイデアが生まれるんです。考えと作業するための手があれば、何千ものチョイスがあるので。
瞑想して、音楽を作って、自分が一番求めている場所を見つけることがインスピレーションに繋がっています。世界がどれほど素晴らしいのか自分で体感して、音楽を通してアウトプットする。こうして生まれたファンタジーの世界には、自然と人が集まるんです。
リアリティから逃れるために。今はテクノロジーを駆使した表現が多いから男性的な趣味に見えてしまいがちですが、例えば、人がゲームをするのは異なる世界に入り込めるからだと思います。音楽を聴くときも映画を観るときも、私達は“現実”という枠から外れて夢を見れるし、アイデアを持つことが出来ます。そうすることで普段は見ることのないフリークな一面が浮かんでくる。私はその現象がとても好きで、だからゲーム文化が盛んな日本をとても面白い国だと思っています。
ありがとう。日本でのショーはとてもエキサイティングでした。特に今回は気の合うVJと一緒にパフォーマンスをすることができたので。
毎回ではないですが、ライブはオーディエンスが集まって成り立っているので、音源とは全く違う必要があります。私はショーをする時には3つの次元で表現したいと考えていて。フロアに立っているという“リアル”な次元、そして“オーディオ”と“ヴィジュアル”のそれぞれから刺激されて生まれる2つの次元。この3つの要素から日常とは異なる空間を簡単に創り出すことで、聴覚と視覚からインプットされた感覚が心に降りてきてトランス状態になります。まるでファンタジーの世界にいるかのように。そのシチュエーションを作れることがAVセットの魅力だと感じます。
*オーディオ・ヴィジュアルセット。音と映像を使用した表現方法。 photo by BRDG
VRも世間から逃れるための手段のひとつ。社会というボックスの中に閉じ込められているあなたを新たな世界に導いて解放するの。
世界を知れば、心が豊かになります。だからもっと音楽を聴いた方がいいし、ゲームをプレイした方がいいし、たくさんのアートに触れた方がいい。非日常的な出来事やアーティストに出会うことで、自分が想像もしなかった発見に繋がるから。今、私が一番伝えたいことです。
design: azusa tsubota
text: saki yamada