CULTURE
見たことのない横浜流星を目撃する『ヴィレッジ』
『ヴィレッジ』
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間違いなく、この映画『ヴィレッジ』には、これまで見たことのない横浜流星がいます。決して大袈裟に言っているのではなく、優という役を通して、本当に見たことのない俳優・横浜流星がいるのです。
その俳優とその役柄がぴたりと合うことは珍しくはないですが、今回の横浜流星と優においては、俳優としての葛藤と優の葛藤が重なり合って、優としてスクリーンに映し出されるような……。そんな一体感すら感じました。
物語の舞台は、美しいやかぶき屋根が並ぶ山あいの霞門村(かもんむら)。のどかな景色のなかには、似つかわしくないゴミ料理施設があり、最初に感じるその小さな違和感が、後に大きな違和感となり、さらにもの凄い衝撃となって、観るものに問題を突き付けてきます。
描かれるのは、閉鎖的なムラ社会のなかで起きている同調圧力や強者が弱者を搾取する社会構造、貧困の連鎖といった現代の闇。生き苦しさを感じるのであれば、村を出ていけばいいじゃないか、そんなふうに思う人もいるでしょう。けれど、どうにもできないことがある、どうにも抜け出せない人がいる。映画のなかで描かれる闇は、現代を生きる私たちと地続きなのだと気づかされるのです。
──と書くと、めちゃくちゃ暗い話じゃないかと、観るのをためらう人もいるかもしれません。しかし!地続きだからこそ観てほしい。どうやってそこから抜け出せばいいのかを考えるきっかけは、その気づきは、映画(フィクション)であることを超えて伝えてくる(リアルな)メッセージでもある。そのメッセージを受けとめて欲しい。
先に挙げたように、横浜さんをはじめ、黒木華、古田新太、中村獅童、奥平大兼……演技派と言われる俳優たちが共演しているのもみどころですし、横浜さんとはこれが6度目のタッグとなる藤井道人監督であることも見逃してほしくない理由のひとつです。
この作品とどう向きあうのか──自分が霞門村に迷い込んだとしたら……という気持ちで向きあう、前情報はナシ、それでいいと思うのですが、敢えて付け加えるのであれば、この映画のメタファーになっている、能の演目「邯鄲(かんたん)」と「羽衣」がどういったものなのかを頭に入れておくと、よりこの映画が伝えたいことを理解できると思います。
横浜流星の芝居に引き込まれる度 |
★★★★★
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誰にでも置き換えられる物語度 |
★★★★☆
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能の舞台を観てみたいと思う度 |
★★★★★
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監督・脚本
藤井道人
出演
横浜流星
黒木華
中村獅童
古田新太
配給 KADOKAWA/スターサンズ
4月21日 (金)
全国公開
Ⓒ2023「ヴィレッジ」製作委員会
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