CULTURE
自分と向きあうことを問いかける『ほつれる』
『ほつれる』
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“ほつれる”という言葉から、何を思い描くでしょうか。言葉の意味としては〈縫い目・編み目などがほどける。束ねてあるものがほどけて乱れる〉ですから、主人公の感情が定まらずに彷徨っているような、居場所を探しているようなイメージもあるかもしれません。
少し大人な映画とも言えます。主人公・綿子(門脇麦)は結婚していますが、夫の文則(田村健太郎)との関係は冷め切っていて、友人の紹介で知り合った木村(染谷将太)と頻繁に会うように。ある日、二人で過ごした帰り道で、木村は綿子の目の前で事故に遭い、帰らぬ人に──。
綿子にとって木村の存在は心の支えでした。彼を失ってしまったことで、彼女は自分自身と向きあわざるを得なくなります。綿子は結婚しているので夫婦とは何かという問いかけもありますが、描いているものはもっと“個”のこと。個のもっと“奥”に潜んでいることです。
人は、何かしら問題を抱えて生きていると思います。心地よく生きるためには、その問題と向き合わなければならないけれど、どうしたらいいのか分からなかったり、できることなら目を逸らして見ないようにしたりして、答えを先延ばしにしてしまうこと、ありますよね。
描かれるのは、そういった問題との向き合い方の一例でもあって。だから、結婚をしていなくても、恋愛をお休みしていても、綿子と同じ境遇でなくても、何か自分ごとのように響いてくるものがある。とても静かな感情の揺れですが、答えを出そうとする綿子の姿にはっとさせられるのです。
監督は、加藤拓也。イタリア留学後に劇団「た組」を立ち上げ、第30回読売演劇大賞優秀演出家賞、第67回岸田國士戯曲賞を受賞するなど、演劇界で注目を集める気鋭の若手演出家です。映画では『わたし達はおとな』に続く2作目になります。
「この作品では当事者性を感じることができない、またはしないで、向き合うことを諦めているある一人のもつれが描かれています。それが小さなことから大きなことまで、いかに繰り返されているのかということが、私にとって二本目の映画になりました。」これは、加藤拓也監督(・脚本)のコメントです。
この映画は、向きあうこと、考えなくてはならないことがある人にとって、その問題と対峙するきっかけになるかもしれない、そういう映画だと思うのです。
考えるきっかけになる度 |
★★★★☆
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演技派俳優が揃ってる度 |
★★★★☆
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監督の舞台も気になる度 |
★★★☆☆
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監督・脚本
加藤拓也
出演
門脇麦
田村健太郎
染谷将太
黒木華
古舘寛治
安藤聖
佐藤ケイ
金子岳憲
秋元龍太朗
安川まり
配給
ビターズ・エンド
9月8日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
Ⓒ 2023「ほつれる」製作委員会&COMME DES CINÉMAS
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