CULTURE
2023.12.29
2023年をふり返って。突き刺さった6本の映画
今週は、新作映画の紹介ではなくその51本をふり返ってみようと思います。劇場では観られなかったとしても、すでに配信で観られる作品もあるので、年末年始の映画選びの参考にしていただけたら嬉しいです。
どれもオススメしたい映画として取り上げていますが、そのなかでも、もういちど観たい映画、強烈なメッセージを残した映画、そして自分の生活を変えてくれた映画、6本を選びました。
今年は、社会的にもさまざまなことが明るみになった年でした。声を上げる勇気、伝える意味、向きあう姿勢、映画から教えられたことも多いです。
『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』と『ウーマン・トーキング 私たちの選択』で描かれた女性たちの選択と行動、突き刺さりました。『アシスタント』も加えたこの3本は別々の作品ですが、共通のメッセージがあります。こんな時、自分はどうすべきか、どうしたらいいのか──考えること、声を上げること、小さくてもいい、その変化が未来を変える、それを教えてくれた映画です。
私たちは普段、当たり前ですが、人間の目線で生活しています。その目線を少し変えるだけで世界は違って見えてくる。
『EO イーオー』と『マルセル 靴をはいた小さな貝』は、違う目線で日常の世界を見せてくれる映画でした。ロバのイーオー、貝のマルセル。イーオーは言葉を発しない本物のロバですが、どこかファンタジー的な世界観として描かれています。一方、マルセルは貝殻を模したキャラクター。完全にファンタジーですが、人間と話せることでリアリティある設定になっていました。
最後は、ファッションのドキュメンタリー『ファッション・リイマジン』。少し前までは、ちょっと浮いた言葉だった「SDGs(持続可能な開発目標)」も今ではすっかり定着しました。
環境問題についてのドキュメンタリーはたくさん作られていますが、この『ファッション・リイマジン』で描かれていることは、そこまで考えるのかとハッとさせられるテーマ。
自分が身に纏っている洋服は、誰がデザインしているかだけでなく、どの縫製工場で、どんな人たちが作っているのか。さらには、素材は何処で誰が生産しているのか。それを知ることで見えてくるものがあるのです。ファッションの楽しみ方に正しいメスを入れてくれる映画でした。
映画館で映画を観てほしい──というのが、映画を紹介する身としての本音ではありますが、世の中にはこんなにもコンテンツが溢れている。あれもしたい、これもしたいと思っていたら、いつの間にか上映終わってた……そんなこともあるでしょう。
ただ、すべての映画がBlu-rayや配信になるわけではなく、その時、見逃したら一生観られないという作品もある。なので、自分自身の直感で「この映画、観たいな」「何か、気になるな」と思ったら、その直感を確かめに映画館に行ってみてほしいのです。
本来、自分の好みではないけれどなぜか気になる、そういう映画と出会った時は、特に行動に移してほしい。“気になる”というのは、おそらく、今、自分に必要なものがそこにあるのだという、自分が自分に送っているサインかもしれないので。そんな思考で映画を選ぶというのも面白いものです。
2024年も素敵な映画との出会いがありますように。
Rie Shintani