CULTURE
その先を想像させることで恐怖を煽る『関心領域』
『関心領域』
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スクリーンに映し出される、とある家族のありふれた日常。彼らが幸せそうに暮らすその隣にはアウシュビッツ収容所がある。塀の向こう側に何があるのか、何が行われているのか。知っているのに無関心を纏い暮らしている人たち──。
まず驚くのは、ホロコースト(ナチスによるユダヤ人の大量虐殺)をこんなふうに伝えるのかという視点です。
ホロコーストを題材にした映画というと『ライフ・イズ・ビューティフル』(ロベルト・ベニーニ監督)や『シンドラーのリスト』(スティーヴン・スピルバーグ監督)といった作品を思い浮かべる人もいるでしょう。ホロコーストを描く多くの作品は、その悲劇を中心に据えてきました。
けれどこの『関心領域』は、アウシュビッツ収容所のすぐそばで暮らす家族を描きながら、その日常のなかにホロコーストの悲劇と恐怖をしのばせているのです。
第76回カンヌ国際映画祭にてグランプリ、第96回アカデミー賞にて国際長編映画賞音響賞を受賞していることからも、優れた作品であることは明らか。なかでも「音響賞」というのが、この映画の特徴に繋がっています。
“塀の向こう側に何があるのか、何が行われているのか”を、背景音として、また会話の一部として伝えています。観る者がホロコーストについて、アウシュビッツ収容所について、ある程度の知識があることを前提に、そこで何が起きているのかを音や気配で想像させることで恐怖を煽る。すごい手法です。
そして、幸せな家庭を貫こうと塀を隔てて無関心でいようとする人間の心理。それが想像以上に怖い、本当に怖いのです。
映画のなかで目撃する無関心について、映画を観終わった後、スクリーンから現実の世界に引き戻された後も考えさせられます。「お前はどうなんだ?」と問いかけてくる。その問いかけもまた恐怖ではありますが、無関心であることの恐ろしさを知らないまま生きることのほうが恐怖だと思ってしまう。
観る人の思考のど真ん中に居座り続ける、とんでもない映画です。
音と気配が伝える恐怖にぞわぞわする度 |
★★★★☆
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ジョナサン・グレイザー監督すごいぞ度 |
★★★★☆
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一度観たら一生忘れないんじゃないか度 |
★★★★☆
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監督・脚本
ジョナサン・グレイザー
出演
クリスティアン・フリーデル
ザンドラ・ヒュラー
配給
ハピネットファントム・スタジオ
5月24日(金)より新宿ピカデリー、TOHO シネマズ シャンテほか全国公開
ⒸTwo Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and
Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.
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