CULTURE
2017.04.15
2010年07月号掲載 ED_LETTER vol.57『CULTURE & TRADITION』
CULTURE & TRADITION
ファッション雑誌を作っていても、いったいどれだけのことを自分が学び、理解し、そして読者のみんなの趣向を考え、有益な情報として丁寧に料理して伝えているんだろう、なんて、京都、奈良を歩きながらもずっと考えてたんだけど......。やっぱり、一生、できれば楽しんで勉強だな、と。いろんな文化や伝統を学び、吸収し、見えるものが広く深くなればなるほど、自分ができることの小ささとか、自分の浅はかさとか、自分の弱さとか、いつもはなかなか自覚できないものがたっくさん実感できちゃったりするもんで。
中学生以来の奈良をゆっくりと歩きながら、中学の時に教わった安岡正篤先生の有名な「知識・見識・胆識」の話を思い出した。「知識」とは理解と記憶力の問題で、本を読んだり、話を聞いたりすれば知ることのできること。「知識」は、その人の人格や体験あるいは直感を通じて「見識」となる。「見識」とは、現実のいろんな事態に直面した場合どう対処するかという判断力。そして「胆識」とは、勇気をともなった実行力、とでも言うべきもの。
例えば、「ゴミが落ちていたら拾ってゴミ箱に捨てる」。これは誰でも持ってる「知識」。でも、実際にゴミが落ちている近くにいても「ゴミが落ちている」と気付く「見識」のある人は少ない。で、さらに気付いた後に「ゴミを拾ってゴミ箱に捨てる」という行動ができる「胆識」のある人は、もっと少ない。たかがゴミひとつとっても、世の中こんなもの。だからやっぱり、自分の大きさを真摯に見つめながら、できるだけたくさん勉強しなきゃな、と。
そんなこんなを考えながら、“文化”や“伝統”をもっと理解し、そして後に“伝える”ということの尊さに触れることのできた、ちょっとした素敵な休日でした。
ナイロン ジャパン編集長 戸川貴詞
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