CULTURE
2016.11.26
2011年01月号掲載 ED_LETTER vol.38『NOWEGIAN WOOD』
NOWEGIAN WOOD
その後3年くらい経ってから、当時付き合っていた彼女のうちに遊びにいくと、偶然本棚に赤と緑の本がきれいに並んでいるのを見つけた。本に出会って3年、やっと読むチャンスが巡ってくる。もう、さんざっぱら村上春樹のことも『ノルウェイの森』のことも、いろんなやつから話を聞いていたから、読む前から随分とストーリーイメージができていたけど、読んだ後に受けた衝撃は、やはりみんなと同じように中毒症状を起こすくらい大きなものだった。
それから、村上春樹作品を片っ端から読みあさり、『ノルウェイの森』も何度も読み返した。僕の中には――おそらく当時この本を読んだ人達みんなの中には、登場人物の「僕/ワタナベトオル」「直子」「キズキ」「小林緑」「突撃隊」「永沢さん」「ハツミさん」「レイコさん」の人物像、容姿、声などが完全に刻み込まれていた。この究極のリアリズムともいうべき恋愛小説に登場する人達の中でも、とりわけ「直子」については、携帯電話もインターネットもメールもない時代の僕らにとっては、仲間で語り合って消化する以外の方法が見つからず、なかなか現実に目を向けられないままに日常生活を送っていた記憶がある。
12月11日から日本で公開される映画版では、「僕/ワタナベトオル」役に松山ケンイチ、「直子」役に菊地凛子、「小林緑」役には、本誌のレギュラーモデルでもある水原希子(本号で大特集!)が抜擢された。試写会を見た人達からはいろんな意見や感想を聞いているけど、20年以上も自分の中で生きているそれぞれの人物像とのギャップをどんなふうに楽しめるのか、せっかくだから、チケット買って大きいスクリーンのある映画館へ観に行こうかと。
まだ自分の中でほんのちょっとだけ消化しきれていない「直子」が、この映画ですっきりするのか、もっと消化できなくなるのか。どちらにしろ、楽しみ楽しみ。
ナイロン ジャパン編集長 戸川貴詞
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