CULTURE
2017.03.11
2012年07月号掲載 ED_LETTER vol.52『I will do it myself』
I will do it myself
僕は、高度経済成長期に生まれ、飛躍的な技術革新とともに次々と登場する新しいもののなかで成長した。で、学生の頃バブル景気のなか、日本には世界一といえるほど“もの”が溢れていた時代を経験するという、まあ、そんな環境で育っているわけだから、当然新しいものには目がなく、そういう技術革新的なものを見るたび目がキラキラ。コピーライターの糸井重里さんが作った有名な「おいしい生活」というキャッチコピーは、そんな消費社会を代弁したようなものだったけど、そこに大きな不安もなく、むしろワクワクさせられてたわけで。
コンビニやファーストフードが世の中に溢れ、農村などの地域共同体は解体、家族も核化が当たり前、古いものも考え方も次々と淘汰され、新しいものこそが素晴らしいことで消費能力の高い人が世の中の優位に立つ......。その時代には服も「人より新しいもの」「最先端のブランドもの」と思ってバイトで貯めたお金をつぎ込んでたけど、洋書屋さんでロンドンのファッションカルチャー誌を初めて目にした時、破れたデニムに自分でリメイクしたTシャツ着たパンクキッズがたくさん載っていて、ほんと、目から鱗、カッコ良すぎて速攻で古着屋さんに行って、自分でいろいろ作ってみたりしちゃったり......。
そしてバブル崩壊後、ある意味ファッションバブルの象徴でもあったパルコを創設した堤清二氏が、 グローバル資本主義を予言した『消費社会批判』を発表。「これ以上消費社会を続けたら、その地域特有の文化を淘汰する恐れがある」という言葉に、何か得体の知れない大きな不安を感じたのを憶えてる。そして、温故知新という言葉があるように、自分のなかでは古いものへの興味や、 それを活かしたものにどんどん惹かれるようになっていって、きっと新しい技術と古い文化がミックスされたようなものが、これからの日本にもっともっと必要なんじゃないか、と思うようにも。ヨーロッパを見るようになってからは、街全体にそういう古い文化を大切にする精神が溢れていて、その頃だと思うんだけど「DIY」=「DO IT YOURSELF」という言葉を耳にするようになり、ああ、 これだ! 自分の目指す道は、と思った記憶がある。
時代とともに共同体が解体されて個人主体になり、そして、今またその個人が SNSなどを使って繋がっていく。画一的なものの考え方が優先された時代から、他を認めつつ個を大切にする時代になった。DIYという精神自体が尊い価値となった今、なんか、世の中おもしろいことがどんどん溢れてくる気がしてる......。
ナイロン ジャパン編集長 戸川貴詞
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flashback memory 2012_07 ・今からでも実践したくなるDIY術を大特集! ・第30回夏季オリンピックがロンドンで開催 ・ドラマ『リッチマン、プアウーマン』で小栗旬が3年ぶりに月9主演 | |