CULTURE
2017.07.29
2013年11月号掲載 ED_LETTER vol.72『mosquito』
mosquito
腕に止まってる蚊をじっと見てて思ったんだけど、世界中には案外いろんなタイプがいるもんだな、と。
シマシマ、茶色、グレー、黒、おっきいやつ、ちっさいやつ、強いやつ弱いやつ、すばしっこいやつトロいやつ、とか。子供の頃からの経験からすると、大型でシマシマのやつが最強に違いない。動きもやたら素早いし、なんといっても刺されたらめちゃめちゃ痒いし。
夏の終わりに、ローマ〜シチリア〜博多〜ニューヨーク、ちょい木更津というプライベートと仕事が入り混じった強行スケジュールのなか、たくさんのいろんなモスキート達に出会った。で、気づいたんだけど、日本、イタリア、アメリカだけ見ても、ちょっとずつ何かが違う。なんというか、人種の違い的な。イタリアの蚊は“タイガーモスキート”って言われるだけあって、強い、陽気、痒さもハンパねーって感じのやたらラテン系だし、博多の蚊はうまいもんばっか食ってマイペースな“よかろうもん”スタイルだし、ニューヨークの蚊はあっちこっちの人に飛び移っていつでも向上心があって何かしたい“ニューヨーカー”な感じだし。一応、木更津は、まあまあ呑気で楽しい“ヤンキー”スタイル、ってとこかな。
そうそう、東京の蚊といえば、なんだかちょっとお疲れ気味だったり、はたまた何かに頑張ろうと希望に満ちあふれていたり、強いやつも弱いやつも、面白いやつもつまんないやつも入り乱れたカオス状態な感じ。
蚊って人間の血を吸って生きてるから、きっと性格や特徴も似てきちゃうんだ。ちょうどローマからの帰りの飛行機に一匹の蚊が紛れ込んでたんだけど、こいつは東京に来てカルチャーショックを受けるんじゃないか、と。でも、きっと今まで経験したことのないような楽しいことをいっぱい見たり、おいしいもの(血を)を食べたり(吸ったり)するのかな、それまで飛行機の中で誰かの血を吸ってる時にベチッて潰されんなよ、なんて思ってみたり......。
久しぶりに、いろんな人にいろんな場所で出会って、あらためて社会って「同じ価値観の人はいない」ことが前提で成り立ってるんだ、と実感。いろんな価値観の人達のいろんなヴィジョンがわんさかあって、自分の価値観なんか本当にちっぽけで、他人の価値観を理解して認めるということは簡単じゃないけどめちゃくちゃ自分の世界も広がっていくことなんだ、と。そう思うと、やっぱり世の中にはまだまだ想像もできないような面白いことがたっくさんあるんだろうな、と45歳にしてワクワクドキドキが溢れ出ちゃってる初秋。
蚊もきっと、本当はいろんな国やいろんな場所に行って、いろんな蚊に出会いたいはず、と、腕に止まってる蚊をじっと見ながら思ってたら......痒ーーーいっ (。> 0 < 。)
ベチッ。
ナイロン ジャパン編集長 戸川貴詞
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