CULTURE
2017.03.04
2014年12月号掲載 ED_LETTER vol.51『prodigy』
prodigy
子供の頃、ウルトラマンや仮面ライダー、もう少し高学年になると、プロ野球選手やビルボードTOPを飾るミュージシャンといったような......。
どのタイミングで諦めたんだろう。諦めた、というよりは自分の中で見切った、というか。結局のところ、本気で目指してなかったし、“やる!”ってちゃんと決めなかっただけなんだけど。じゃあいつ、ちゃんと決めれば良かったのかな? そう思い起こしてみても、ああ、あのタイミングだったな、というような明確さはないわけで。大リーガーのイチロー選手がいくら“努力の天才”と称されても、心のどこかで、生まれた時からイチローで、僕らの時代で言えば、生まれた時から王貞治、みたいに思っちゃったり。 中学、高校、大学と過ごしいく過程で、サンタさんのことを口にしなくなるのと同じく、ウルトラマンのことはもちろん、どこかでやると決めれば可能性はあったはずのミュージシャンのことなど、学生時代に30種類くらい長期、短期合わせてバイトしていくうちに、頭ん中からキレイさっぱり消えていて......。
大学卒業して出版社で働き始めてからも、まだしばらくは“非凡”というものを、どこかでずっと追い求めてた。当時の有名なスター編集長に憧れ、さてこれからどうやって登りつめてやろう、でも自分が今やってることはその道とは違うんじゃないか、的な。 でも、ある時何の前触れもなく、ふと気づいた。ウルトラマンも仮面ライダーも、プロ野球選手もTOPミュージシャンも、ましてやサンタクロースだって、みんな“仕事”でやってるんだよな、と。いろんなバイトをしながら、楽しかったり辛かったり、なんかすべてのことが心に落ちて行かない、もやっとしてたことの霧が、その時スッと晴れた気がした。就職してからの自分自身を見つめ直しても、バイトしてた学生時代と変わらないままだということを、そこで初めて痛感しちゃったりして。
自分が“何かになる”んじゃなくて、“何かをする”のが仕事なわけで。それまでずっと、他者から見た自分を追い求め、だからこそ、他者から憧れられるような“非凡”さを持った人達に憧れ、自分もいつかそうなりたいって思ってたけど、他者のために何かがしたい、と自然に思えた時、これからどんな仕事をしてやろうと、もやっとしてたものが急に心の底まで落ちてワクワクし始めたり......。
NHK朝ドラ『花子とアン』の最終回、『赤毛のアン』出版記念パーティの席で梶原元編集長が、「ありふれた日常を輝きに変える言葉が散りばめられたこの小説は、まさに“非凡に通じる洗練された平凡”であります。必ず時代を超えて読み継がれるベストセラーとなることでしょう」と祝辞を述べる。
ふむ。非凡の意味は違えど、今自分に出来る平凡なことを誰かのために“やる!” と決め継続すること。そう思いながら、この歳になってもまだちょっと、“非凡” な自分になりたいという、横しまな心が残ってることも否めなかったり......。 ま、そんなもんか。
ナイロン ジャパン編集長 戸川貴詞
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flashback memory 2014_12 ・女優新垣結衣のセルフィー大特集! ・お笑いコンビ日本エレキテル連合の「ダメよ〜、ダメダメ!」が流行語大賞を獲得 ・第56回日本レコード大賞に三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBEが『R.Y.U.S.E.I』で初受賞 | |