CULTURE
2018.09.01
2018年2月号掲載掲載 ED_LETTER vol.124『NIHIL』
NIHIL
“NULL”(ヌル)とは、プログラミング用語で“何も示さないもの”という意味で、無、ゼロ、無価値、虚無的なことを指す。“NIL”(ニル)や“NIHIL”(ニヒル)も、ラテン語で同じような意味を持つ言葉。
最近ではめっきり聞かなくなっちゃったけど、昔の映画や歌では、よく“ニヒル”という言葉が使われてた。「ニヒルな顔をした」「ニヒルな表情をする」「ニヒルな笑みを浮かべる」。そんな“ニヒルな男”に子供の頃は憧れてたわけで。なんか、大人で影があって冷たくて無表情でちょっと悪そうな男。たまに笑う時も、片方の口角をちょっとだけ上げるような感じで。
どっちかというとニヒルって、クールでかっこいい、というイメージの言葉って思ってたけど、今になって考えてみると、コンピュータ関係で使われるヌルやニルといった言葉と同じで、本当の意味としては無価値で虚無的な、ということだったんだなって。
でも、その無価値で虚無的なモノやコト、まさにヌルの状態を現実世界にイメージシンクロさせると、怖さにも似たドキドキを感じる。コンピュータ関係の本を読んだりする時に、“NULL”(ヌル)という言葉を見るだけでドキッとしちゃったり。イメージ的には宇宙に通ずるものがあって、未知の世界で神秘的で、心臓が落ち着かなくなってどっかに持ってかれるような。
子供の頃、ニヒルな男に人知れずときめいていたのは、無価値の価値に憧れ、虚無の世界にこそ真実があるという、その神秘を無意識のなかで感じていたから......。
そんなニヒルな男に私はなりたい、かも。
ナイロン ジャパン編集長 戸川貴詞
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flashback memory 2018_02 ・永世七冠・将棋の羽生善治が、国民栄誉賞を受賞 ・2020年東京オリンピック・パラリンピックの大会マスコット決定 ・超小型衛星『TRICOM-1R』搭載・世界最小級ロケット『SS-520 5号機』の打ち上げに成功 | |