CULTURE
2018.10.06
2018年7月号掲載 ED_LETTER vol.129『copy and paste』
copy and paste
まず、前号の僕のコラムで、絶対にやってはいけない大きな大きな間違いがありましたことを謝罪いたします。それは、『徒然草』の作者を、清少納言と書いてしまったことです。皆さんもご存知の通り、作者は吉田兼好です。小学校の教科書にも出てくるような、あまりにも有名すぎる作品の作者を間違えて掲載しまったこと、それを皆さんにお金を出して買わせてしまったこと、心からお詫び申し上げます。そして、そのことをご指摘いただいた方々、本当に心から感謝いたします。
創刊から14年間、こんな恥ずかしく失礼な間違いはなかったのですが、今回なぜこのようなことが起こってしまったのか、せっかくならこの自分自身の大きな間違いをコラムの題材にできれば、と。
すべての元凶は “コピペ”。僕がこの仕事を始めた頃は、パソコンやスマホがない時代だったから、そもそもコピペというもの自体存在しなかった。当時原稿を書く時は、400字詰めの原稿用紙で、間違えたら消して書き直すし、最後に赤ペンで細かい直しを入れて文字数調整をする。だから、最初にある程度全体の文字数を意識してから、どういう起承転結にするかをイメージして書き始める。でも、今はコピペができちゃうもんだから、とりあえず書き始めてから、違うことを書きたくなったらなったで書き留めておいて、最後に直しを入れたり、コピペしながら文字数調整したりする。今回の間違いが起きてしまった大きなポイントです。手書きで文章を書くと、(僕は)文章の流れがとても綺麗になります。そして、書いているときに頭のなかに映像が流れるので、行間にその映像が込められます。でも、パソコンで書くようになってから、もちろん今はほとんど慣れて手書きと同じように書けるようにはなったんですが、どうしても情景が浮かばない時は、今でも手書きで一回書くようにしています。
前回、清少納言の『枕草子』の序文を最初は書いていました。「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる」ですね。いろいろ書き進めていくうちに、吉田兼好の『徒然草』の方がいいな、と考えが変わり実際に書いてみると、とても字面も含めてしっくりきたので、それにしようと決めました。で、名前の部分だけ無意識に残してしまったまま、後で書いた徒然草の部分を “コピペ” して移動し、最後まで気づくことなく校了。一応補足しておくと、原稿を書き上げるのがギリギリになってしまったため、校正さんや他の編集部員の確認も自分の判断で飛ばしてしまい、これこそ自分が間違えるはずはないという奢りの最たるもので、本当に情けない話ですが、その結果こういう事故が起きてしまいました。
“コピペ” は、文章の流れや行間にある空気の大切さをなくしてしまうから絶対にダメだ、と昔はよく教えていたのに、今では自分でついついやってしまう。全てのコピペがダメと言っているわけではなく、コピペを使うなら、使わない時以上に慎重に丁寧に文章に向き合わないといけない。例えば、ネットなどで流れているものを簡単にコピペしてしまうと、法律的なことは当然のこととして、文章に限ったことではなく、世のなか全ての事象や他人の考えなどを、自分自身の言葉にできないままに表現してしまうことになる。
世のなかに “コピペ” が溢れる時代に、自分自身が何を見て、何を考えて、何に責任を持って表現していくか。
改めて、自分自身に向き合ってみようと思う。
ナイロン ジャパン編集長 戸川貴詞
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