CULTURE
2018.10.13
2018年8月号掲載 ED_LETTER vol.130『Just Like The Water Of A River』
Just Like The Water Of A River
ふと思い出し、約30年ぶりに京都・亀岡から嵐山までの保津川下りを楽しんだ。嵯峨嵐山からトロッコ電車に乗り亀岡まで。そこから約16キロの距離を約2時間かけて、流れの激しいところや穏やかな流れのところや曲がりくねったところや深い淵のところなどを、3人の船頭さんが、楽しい歴史の話や四季折々の自然や生き物の話に熟練された冗談を時折交えながら、それぞれの役割りを順次交代して漕ぎながら嵐山まで下っていく。
30年間、ずっと忘れていた記憶がちょっとずつ蘇る。あの時も船頭さんがこんな話をしてたなあとか、岩の様子とか、川の様子とか。記憶のなかでは30分くらいで下ってくるイメージだったけど実際は2時間かかって、っていうのもその時にも感じたなあとか。
そして、その当時の自分のこと、将来についていろいろ考えていたこと、世のなかについていろいろ考えていたこと。
以前もこのコラムで、保津川下りを例えて何か書いたような記憶もなんとなくあるんだけど、30年前も、おそらくそのコラムを書いた時も、そして今現在も、基本的に考えてることは全く変わってないように思う。
それはいつでもどんな時でも、川の流れのように人生は流れているっていうこと。先のことを考えすぎてもどうなるかなんて分からないし、前を振り返ってもそっちには戻れないし、基本は今自分がどんな状況だとしても、流れに身を任せて前に進むしかない。自ら進むという意味ではなく、自分が立ち止まって考えている時だとしても、時間も場所も常に“進んでいる”わけで。1606年から412年続いている保津川下りと同じように、目の前に現れる激流をタイミングを合わせて通過したり、大きな岩を竿で瞬時に判断しよけて進んだり、穏やかな流れの場所では力を合わせてめいっぱい漕いで進んだり、周りの綺麗な景色を眺めて物思いにふけったり、自然の生き物 達を見て生命の尊さを感じたり......。
たった2時間だったけど、僕にとってはすごく長い2時間で、本当に走馬灯のようにいろんな感覚を思い出しながら、頭の中が整理できた。今日からまた、川の流れのように。
ナイロン ジャパン編集長 戸川貴詞
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