CULTURE
2018.11.03
2018年10月号掲載 ED_LETTER vol.132『THANKSSUMMER』
THANKSSUMMER
平成最後の夏。だからなんだ、って話なんだけど、昭和最後の夏からちょうど30年。
あの時は、最後の夏になるとは、誰も思ってなかった。結果として、昭和という年号最後の夏になっただけのこと。でも、今こうやって平成最後という言葉が飛び交うと、改めて、あの夏から30年を思い返してみたくなった。
流行った歌、トレンドの服、世のなかのニュース、仕事のこと、身の回りのこと......自分の人生にとって大切で大きなことや、世のなかの大きな変化や出来事が、ほんとに数えきれないくらいあったはずなのに、目をつぶって鮮明にすぐ思い出せることなんて、ほんのひと握りなわけで。
昭和最後の夏のことは、覚えてないことがほとんどだけど、確かな匂いや、心の色や、広がる景色や、あたたかで穏やかでゆっくりと流れる空気は、いつでも思い出せる。それだけでも、自分はとっても幸せな時間を過ごしてたんだな、と。それから平成になって30年間、それがいつのことかはわからないけど、そこに流れていた空気は、思い起こせばふわっと浮かんでくる。
今はネットを見れば、具体的な出来事は全て時系列で整理されてる。記憶力が低下してる気がするのは、歳のせいなのか、環境のせいなのか。その時その時代に、世のなかで何が起こっていたのか、自分が何をしていたのか思い出すことなんて、今はスマホ1台で全て事足りる。それを見て、スマホには記録できない、流れる空気や心の色を思い出す、ということか。
そういう環境で育った読者のみんなが、平成最後の夏に感じていることはどんなだろう、と考えてみる。昭和最後の夏に自分が感じていたことと何が違うんだろう、と、光に透かして重ね合わせてみる......。
ま、いちいち憂いていれるほど平和な世のなかじゃないし、誰にとかではないけど、やっぱり全てに感謝して、自分の感覚をいつでも信じて。
平成最後の夏が終わる。
ナイロン ジャパン編集長 戸川貴詞
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