「THE FOUR-EYED」は新宿歌舞伎町にある人気セレクトショップ。その厳選されたセレクションは、多くのファッショニスタから絶大な支持を集めている。NYLON JAPAN 5月号の特集で取り上げた数々のインディペンデントブランドのアイテムも揃う。そんなお店のオーナーである藤田佳祐、バイヤーを務める渋川舞子の2人のインタビューをお届け。東京のシーンを彩る人気店の秘密を探って。
オープンから1年半。変化はありましたか?
藤田:新しい発見が増えたことですね。思っていた以上に若い世代とのつながりが広がって、東京にはまだまだ、新しい”次’を求める層がいるんだなと気付かされました。
もともと大阪で活動されていた藤田さん。 東京との違いは感じますか?
藤田:大阪と東京のストリートシーンでは情報の発信源が異なるように感じます。東京ではメディアが身近にあるからそのままダイレクトにストリートに届いて、雑誌ごとのジャンルみたいなものが存在している。一方で大阪とか地方では、メディアよりもお店が中心にあるように感じるんです。「どこどこの店に行ってる」っていうのが、その人のファッションの系統を表すものになっていることがある。
ストリートフォトグラファーとしての経歴もお持ちですが、そのバックグラウンドは今のお店にどのように影響していますか?
藤田:人脈、ですかね。今人気のある人たちと有名になる前から知り合っていることも多いので、自然と彼らと互いに後押しし合えるという気持ちが出てくる。それがお店と彼らとの間に多少なりとも信頼関係を生むきっかけにもなっていて。
お店のビジュアルはほぼ藤田さんが撮影されているんだとか。
藤田:確かにそうなんですけど、自分で撮る事には実はあまり拘っていないんです。フォトグラファーとしての自分を主張したいという気持ちがあるわけではなく、店のディレクションの一貫として撮っているという感じ。コストも掛からないしね(笑)。
バイヤーの渋川さんとの出会いは?
渋川:最初のきっかけはやっぱりストリートスナップ。服屋で働いていたときに頻繁に写真を撮ってもらっていたんです。お互いをよく知るようになったきっかけは海外のコレクションかな。前職で海外のファッションウィークを回っているときに必ず出くわしていたので。
藤田:そうそう、日本人は少ないからね(笑)。
バイイングは基本どちらに?
渋川:一番多く行くのはパリかな。全都市を回るのはなかなか大変だけど、パリにはほとんど何でも集まっているから。古着もコレクションも両方買い付けます。
パリでおすすめの古着屋さんは?
渋川:それは……秘密です(笑)。私、「ヴィンテージ」とか「アンティーク」っていう言葉があまり好きじゃなくて。アンティークショップで「これは50sの〜」って言われてもあまり魅力を感じないんです。逆にチャリティーショップとかバザーに、ランダムに置かれているものから見つけ出すことの方が多い。
バイイング中のファッションのルールはありますか?
渋川:ヨーロッパの石畳の上をとにかくよく歩くので、スニーカーは欠かせません。ショーからショーへの移動を車でできるような人ならいいけど、そういうわけにはいかないので(笑)。Eytysのブラックスニーカーは愛用しています。
インディペンデントブランドを多く取り扱う上では、デザイナーとの直接のやりとりが主なのでしょうか?
渋川:そうですね。うちはビッグメゾンを取り扱っていないので、デザイナーとの距離は近いです。もともと友達だったデザイナーとお仕事に発展することもあるし、展示会にちょくちょく顔を出している間に仲良くなることも。
藤田:お客さんとしてお店に遊びに来たルキちゃん(
@yu67)は、それがきっかけで仲良くなって、彼女がデザイナーを務めるNodress(
@nodress_online_shop)をうちで取り扱うことになったんです。
逆にデザイナー側からのアプローチはあるのでしょうか?
藤田:多いですね。熱烈な手書きのはがきをもらうこともあれば、インスタのダイレクトメッセージで来ることも。アプローチの手段はなんでもよくて、そこに拘ってはいないんです。だからこそ、「熱烈だから」とか「友達だから」っていう理由だけで「はい、取り扱いましょう」ということにはならない。そこはシビアに判断しています。
バイイングの際に、自分の中で設けている“基準”のようなものはありますか?
渋川:基本的に、「自分で着たいと思うものを買い付けていい」って言われているんです。シーズンを重ねるごとにやっとお店の全体像を見据えながら買い付けをするようにはなってきたけれど、 結局は自分が好きなものしか買っていないんですよね(笑)。「流行るだろうな」と思いながら打算的に買い付けることはないです。 流行るだろう、っていうのと、着たいか着たくないかはまた別じゃないですか。
(写真左:藤田/The Four-Eyedオーナー、右:渋川/The Four-Eyedバイヤー)
最後に、人気セレクトショップとして、コミュニティスペースとして、今後のヴィジョンを教えてください。
藤田:なるようになるんじゃないかなっていう気楽な気持ちです。 でも場所があるっていうのは強みですよね。ネットやSNSと違って、予想できない出会いが生まれる確立が高い。お客さんで来ていたモデルの子をそこにに居合わせたスタイリストに紹介したら、たまたま馬が合って仕事に繋がるなんてこともあります。そうやって自分がきっかけで人と人が繋がるっていうのは喜びですね。だって嬉しいじゃないですか、自分の紹介で知り合った友達と友達が結婚したら(笑)。誰かが前に進むきっかけを作れる場所になっていたらいいですね。
デザイナーのCarles Jeffreyはイベントオーガナイザーとしての顔を持つ。ハンドドローイングを施したデザインや独特のパターン使いで、唯一無二の存在感を放つロンドンブランド。
@_charlesjeffrey
藤田「THIS IS SHIBUKAWAっていうイメージ、うちの店にとっても欠かせないカラーパレットの一つです」
渋川「彼はデザイナーとしてのクレージーな部分と、ビジネスでのクレバーな部分の両方を持ち合わせているひと。こちらのフィードバックをちゃんと受け止めて次に繋げてくるんです」
香港生まれ、ロンドン育ちのRyan Loがデザイナーを務める。ドリーミーなテクスチャーに、シックなテイストを融合させたアイテムが人気。
@ryanlostudio
渋川「女の子の象徴のような服が特徴的。行き過ぎともう紙一重なレベルのかわいいを追求している感じがするんです。一歩間違えたらダサい、っていうそのギリギリのところに心くすぐられるんです。ヨーロッパのブランドで、ここまで際どい“かわいい”を打ち出してくるなんて、と衝撃でした。デザイナーの彼もすごくスイート」
台湾の出身のデザイナーが手掛けるブランド。メンズアイテムを中心に展開しながらも、ユニセックスにも着られると幅広く支持されている。
@chinmenswear_intl
藤田「デザイナーの彼とはクリエイティブな面で共感できるところが多くて。ウチのディレクションでブランドのキャンペーンヴィジュアルを手掛けたことも。こちらのコミュニティと海外のインディペンデントとブランドがこうしてコラボレーションできることは本当に嬉しいことですよね」