CULTURE
2016.06.15
雨の日のブルーな気分に、そっと寄り添ってくれる音楽
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「毎朝、登らなきゃいけない山がある/それで手いっぱい/目が覚めた時/私の目の前にあるのはそれ/現実にようこそ」。ここで歌われているのは、キラキラとした過去を懐かしむ気持ちと、いつまでも晴れない今の気分。深い溜息が聞こえてくるような、メランコリックで甘美なエレクトロ・ポップ。
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今年で23歳になるAriana。ニュー・アルバムの『Dangerous Woman』には、「ただのローティーン向けのアイドルじゃない」と主張するような大人っぽさも感じられるように。そのアルバムからのシングル・カットであるこの曲は、今の彼女にぴったりの艶やかなディープ・ハウス。
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フレッシュで刺激的な音楽を次々と生み出し、ここ数年注目を浴びているコペンハーゲンの音楽シーン。これは、そこから世界に大きく羽ばたこうとしている4人組の最新トラック。スカスカのバンド・サウンドで狂おしいほどメロウなR&Bをプレイするのが新鮮。
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Beyonceの最新作でコラボレーターに起用され、Frank Oceanの新作にも参加の噂があるJames Blake。アメリカのメインストリームの第一線に躍り出ようとしている彼の最新シングルは、以前にも増して緻密さを増したエレクトロニック・サウンドと涙に濡れたヴォーカルが心に染み入る。
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7週連続で全米1位を獲得した2007年の大ヒット曲。タイトルは雨の歌を連想させるけれど、実は、辛いときは守ってあげるから私の傘に入って、という歌。「今はこれまでにないくらい雨が降ってるけど/私たちにはお互いがいるって忘れないで/私の傘に入っていいのよ」。守るのは男性じゃなくて女性の方というのも現代的。
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バンド・サウンドとクラブ・ミュージックを融合させたパイオニア的存在であるイギリスの大ベテラン。この曲は彼らが多大な影響を受けたKraftwerkにも通じるシネマティックなシンセ・ポップだが、哀愁漂うピアニカの音色が一際切なく印象的。83年のセカンド『Power Corruption & Lies』収録曲。
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どうせ失恋の痛みに耐えなくてはいけないのなら、いっそのこと、もっと深く傷つけてほしい――「ネクストAdele」と呼ばれる彼女がパワフルに歌い上げるのは、そんな深く突き刺さるような言葉。王道のポップ・バラッドのようでありながら、そのサウンドにはUKクラブ・カルチャーの影響が随所に垣間見られる。
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独特のコード感で爪弾かれるアコースティック・ギターと、どこまでも透明で美しく、深い悲しみを湛えた歌声。いつまでも心に響くような余韻を残す歌詞も彼女の魅力で、この曲では、別れが迫った恋人をワインに例え、「あなただったら1ケースだって飲み干せる/それでもこの足で立っていられる」と歌う。James BlakeやLapsleyも彼女の歌の世界に魅了されていることを公言。
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James Blake、The xx、Disclosureなどイギリスのクラブ・シーンは次々と素晴らしい才能を生み出し続けているが、今もっとも期待と注目を集めているのは彼かもしれない。時流のクラブ音楽をポップに昇華する手腕はピカイチで、この曲では90年代のブレイクビーツやディープ・ハウスをセンスよく取り込んでいる。
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2007年にリリースされ、グラミー賞で2部門にノミネートされたカナダ人シンガー・ソングライターの代表曲。バンジョー、ヴァイオリン、トランペットなどで彩られたサウンドは賑やかだけど、どこか切ない。それは、この曲が10代の頃の失恋に思いを馳せているビタースウィートな曲だからかも。
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2016年6月現在、PVの再生回数は7億7800万回を超え、数々のパロディ・ヴィデオやアンサー・ソングも作られるなど、アメリカでは社会現象とも言える盛り上がりを見せた大ヒット曲。「きみはよく携帯に電話してきた/夜遅く、僕の愛が必要なときに」「でも僕が町を出て行ってから/僕たちは上手くいかなくなった」と未練たっぷりに歌われる、DrakeらしいメロウでメロディアスなR&Bポップ。
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Everything But The Girlの片割れによる83年のデビュー作で、ここ日本ではネオアコの名盤として崇められている名作のタイトル曲。ボサノバのリズムを取り入れたアコギと透き通った歌声――ほぼそれだけで構成されているこの曲は、冬の海辺を一人ポツンと彷徨っているようなもの悲しさを滲ませている。
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UKクラブ・カルチャーの最深部と90年代R&Bが出会ったようなサウンドと、少しばかりFKA Twigsを思わせる神秘的なヴォーカルで一躍注目を集めたイギリスのシンガー/プロデューサーの最新シングル。全体的にディープで落ち着いたトーンながらも、持ち前のハイトーン・ヴォイスでどこまでもエモーショナルに歌い上げるコーラスがカタルシス抜群。
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「あなたのことを嫌いになったわけじゃない。でも、これ以上傷つきたくないから、別れを告げなくちゃいけない。だからウォーリック・アヴェニュー駅で会って、1時間だけ話し合いましょう」というストーリーの切ないハートブレイク・ソング。過去に後ろ髪を引かれながらも新しい世界へと旅立つ決意が、レトロでゴージャスなソウル・ポップに乗せて歌われている。
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ジャズ新世代を牽引するRobert Glasperが、ジャズの巨人Miles Davisの曲をリメイク。オリジナルの印象的なピアノ・リフを引用しながらも、現代的なヒップホップ・ビートを差し込み、美しく幻想的に展開。Bilalのソウルフルなヴォーカルも光る。
text yoshiharu kobayashi / the sign magazine