CULTURE
2015.06.01
新世代の声、Kendrick Lamarによる圧巻のマスターピース
第57回グラミー賞では2冠を達成。そして、今年3月に予定を一週間前倒ししてダウンロード・リリースが始まったメジャー二作目『To Pimp A Butterfly』が、Spotifyで初日に960万回再生という新記録を樹立し、全米チャートでも2週連続1位に輝いたラッパーのKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)。カリフォルニア州コンプトン出身の27歳である彼は、今もっとも熱い期待と信頼が寄せられている“新世代の声”。 実際、『To Pimp A Butterfly』は、早くも2015年のマスターピースだと断言していい、とんでもないスケールの作品。現行ジャズやヒップホップのトップ・アーティストが集結して鳴らされるサウンドは息を飲むような瞬間の連続で、様々なストーリー/精神状態/キャラクターを巧みに演じ分けるKendrickの多彩過ぎるラップのスキルも圧巻! これは、そのサウンドを聴いているだけでも十分にすごさが伝わってくるアルバム。でも、歌詞対訳がついた日本盤も遂にリリースされたので、彼の言葉の圧倒的な力にもぜひ触れてみてほしい。全16曲80分弱の大ボリュームでKendrickが綴るのは、近年特にアメリカでクローズアップされている黒人差別の問題と、ラッパーとして成功を収めた自分自身の葛藤が複雑に交錯していくストーリー。自己嫌悪や苦悩を繰り返した末に、「俺は自分を愛している」という力強いメッセージを発する終盤のクライマックス“i”は感動的なトラックだし、その先に用意されている驚きの展開にも唸らされるはず。 まさに破格の傑作。Taylor Swift(テイラー・スウィフト)やJustin Timberlake(ジャスティン・ティンバーレイク)、Kanye West(カニエ・ウェスト)からも称賛の声が上がるなど、世界中で絶賛を巻き起こしているこのアルバムは必聴! D'Angelo, The Vanguard / The Charade 15年ぶりに新作『Black Messiah』を発表したネオ・ソウルの伝説。「みんなが“黒い救世主”になることを志すべきなんだ」という同胞たちへのメッセージが込められた同作は、Kendrickのアルバムとも並べて聴きたい。 A$AP Rocky / Everyday (Audio) ft. Rod Stewart, Miguel, Mark Ronson ジャンルの枠組みを越えて注目される新世代ラッパーは増加中。その西海岸代表がKendrickだとすれば、東海岸代表は彼かも。 Flying Lotus / Never Catch Me ft. Kendrick Lamar Kendrickの新作にも参加した、LAビート/ジャズ界の最重要アクト。昨年、自身のアルバムにKendrickをフィーチャー。 |
Kendrick Lamar-『To Pimp A Butterfly』 2,450円(税別) 発売中 tracklist 01. Wesley's Theory ft. George Clinton and Thundercat 02. For Free? (Interlude) 03. King Kunta 04. Institutionalized ft. Bilal, Anna Wise, and Snoop Dogg 05. These Walls ft. Bilal, Anna Wise, and Thundercat 06. u 07. Alright 08. For Sale? (Interlude) 09. Momma 10. Hood Politics 11. How Much A Dollar Cost ft. James Fauntleroy and Ronald Isley 12. Complexion ft. Rapsody (A Zulu Love) 13. The Blacker the Berry 14. You Ain't Gotta Lie (Momma Said) 15. i 16. Mortal Man |
text yoshiharu kobayashi / the sign magazine