CULTURE
2016.02.27
今いちばんHOTなガールズバンド、HiNDSにインタビュー
Carlotta (vo.>.) @carlottacosi |
Ana (vo.>.) @anaperrote |
Ade (ba.) @ademartin |
Amber (dr.) @ambergrimbo |
Carlotta:アナは私がつきあっていた男の子の親友で、彼はアナの当時のボーイフレンドの親友。みんなでよくライヴに行ってたの。で、そのボーイフレンドたちは一緒にバンドをやっていて、いつもリハーサル・ルームで何時間もつるんでたんだけど、当時は自分でギターを弾こうとは全然思わなかった。初めて弾きたいと思ったのは、海岸沿いにスペインを旅した時。アナと私のふたりだけで、ものすごく解放された気分で、人の目も気にしなかったし、プレッシャーも全然なかった。それで、ギターを2本持っていって弾き始めて、Bob Dylan(ボブ・ディラン)の曲を歌ってみたの。それが本当に楽しくて。あの瞬間に始まったのよ。
―メンバーは全員女の子だけって最初から決めていた?
Carlotta:イエス! イエス! イエス! メンバーのうちふたりが男の子だったら、全く違うバンドになってたはず。だから女の子って決めてた。
Ana:パーソナリティが重要な条件だったと思う。Amberを選んだ時に私たちが確認したのは、「お互いに仲良くやって行けるか?」ってこと。それが重要だって分かってたから。
Carlotta:Adeも私たちの親友だし。
―Hindsを組んだ時に、「自分たちもこうなりたい!」って思っていた音楽的なアイコンはいる?
Carlotta:たくさん!
Ana:この人のこういう着こなしが好きだとか、こういうパフォーマンスが好きだとか、いろんなものが自分たちの中に入ってきてる。あのポスターが好きだとか、あの人がこういうふうにフェミニズムを語ってるのが好きだとか。そういう部分をたくさんの好きなアーティストから取り込んでるんじゃないかな。
―じゃあ、好きなファッション・アイコンは?
Ana:Mac DeMarco(マック・デマルコ)は好きかな。あと……。
Carlotta:うまく答えられない! だって、フェスに出演するたびに、他のバンドがみんな私たちよりクールでかっこいい、って思うから(笑)。
―HiNDSはライヴでのドレスコードってあるの?
Carlotta:私たち、スニーカーしか履かないの。すごく踊るから。それからジーンズ。これもやっぱり動きやすくて、楽だから。
Ana:で、トップはビッグなTシャツ。
Carlotta:大抵は大きなロックンロールTシャツで、好きなバンドのTシャツだったり。
Ana:今着てるのはRatatat(ラタタット)のシャツなの、ほら(と、ロゴを見せる)。
Carlotta:ツアー先で街のTシャツを買うこともあるし。スーベニアのTシャツが好きなのよね。
Ana:ライヴではパジャマに見える服でプレイすることもある。それはやっぱり、自分たちがやってることに対して気楽で、私たちカンファタブルなんだよ、っていうのを見せたいから。着飾って自分を隠したり、本当の自分よりきれいに見せなくていいんだ、ってこと。もちろんスカートを履く日もある。それはロックンロールで、何にも縛られない自由な姿勢ってこと。もしその日フェミニンな気分だったら、脚を見せたり、ちょっと肌を露出してもいい。それで誰が何を言おうと、関係ないでしょ? 何かのルールに従う必要もないし、自分がやりたいようにやっていいんだ、ってことなのよ。
―まさにファースト・アルバム『Leave Me Alone』のタイトルみたいに、「ほっといてよ、好きにさせて!」っていう感じ?
Carlotta:あのタイトルでは、「誰もここから先には入れない! 自分たちにとって何がベストか判断するのは私たちの価値観や直感。それを誰も変えることは出来ない!」って訴えてるの。私たちのモットー、「Our Shit, Our Rules=これは私たちのもの、私たちのルールでやる」も似たところがあって、「ねえ、これは私たちの音楽なの。この曲がクソみたいに聴こえたとしても、私は気にしない」って主張してるわけ。
―その『Leave Me Alone』は、どんな作品に仕上げたいと考えていた?
Carlotta:シングル曲のヴァイブを維持して、サウンドを磨かないことにしたの。あまりにもローファイで、イマドキこんなアルバムって見つからないかも(笑)。でも、音のクオリティやサウンド志向を、ファースト・アルバムで変えちゃうのは早過ぎる。このアルバムが一番広く知られる作品になるはずだし、私たちの身分証明書だから。私たちはすごくいいスタジオでレコーディングしたんだけど、設備は全然使わなくて。逆に、わざと音を粗くしたの。ヴォーカルにもう少しディストーションが欲しいなと思ったら、アンプをあれこれいじって調整したし。何もかもがハンドメイドだってことが、音から伝わると思う。
Ana:それに、こういうサウンドだから、みんなが私たちを身近に思えるところがあるんじゃないかな。リアルでナマに感じられるし。ファンもそれが気持ちいいんじゃない? プロデュースされ過ぎてなくて、オートチューンも使ってなくて。私たちの中から出てきたそのままの音だから。
―このアルバムを聴いて、聴き手にどんなことを感じ取ってもらいたい?
Carlotta:私が心から望んでいるのは、「なんてヘンテコなんだろう。でも大好き!」と思ってもらうこと(笑)。ほら、例えばThe Strokes(ストロークス)やMac DeMarcoを初めて聴いた時、みんなそういう反応をしたと思うの。彼らはほかの誰とも違うし、私もどんな風にそのサウンドを形容していいのか分からない。ロックンロールなんだけど、そうじゃない。なんでこんな声で歌って、なんでギターはこんな音を鳴らしているんだろう……って訝っているうちに、ふと気付くとすっかりハマってる。そういうバンドになれたらって願ってる(笑)。それにもちろん、リアルなロックンロールを鳴らしたい。ビジネスから音楽を救いたいの。パーフェクトに歌う必要はないし、パーフェクトである必要もない。ガリガリでブロンドである必要もないし、アメリカ人である必要もない。世の中には音楽を台無しにしていると私が感じるものが本当にたくさんある。だから、私たちの力なんてたいしたことないかもしれないけど、可能な範囲内で音楽を原点に回帰させたいの。
―来日公演も楽しみにしています。世界中を飛び回るHiNDSのみんなは、東京のファッションシーンについてどう思う?
Carlotta:東京のファッション? もっと知りたいけど……すっごく大きな靴を履いたり、クレイジーなヘアスタイルにしたりするんでしょ? 知ってるのはそれくらい。でも大好き。
Ana:Carlottaはもっと髪をいじりたいのよね。でも時間もないし、そのための道具もないし。
―じゃあ、東京に来て、ヘア用のピンとか道具とか、あとメイクアップも買わないと。
Carlotta:ほんとほんと! そしたら私、全部変えて変身しちゃう。
Ana:東京のビフォー・アフターで誰もHiNDSのことわからなくなったりして(笑)。
text yoshiharu kobayashi / the sign magazine
design chinatus ikarashi
edit saki yamada